星屑の軌跡

26

告白3

コハル誕生に沸く清田家はしかし、生まれたばかりの赤ちゃんを迎え入れるには少々騒がしい状態にあり、はウサコが出来るだけ静かに休めるようにと退院前から準備をしてきた。

――が、どうしても女の子誕生に我慢がきかないのが新九郎じいじと尊おじちゃんである。

何しろ清田家孫世代計7人、女の子はアマナとコハルだけ。小山田家の2番目は女の子だったが、物心ついたときからきらびやかなことが苦手で、髪型は常にベリーショート、ボトムはズボンしか穿かないという子である。現在部活に夢中。なのでふたりは我慢ならないのである。

「女の子ー!」
「女子ー!」
「かわいいー!」
「たまらんかわいいー!」

コハルは早速じいじとおじちゃんの間で取り合いになり、おかげでウサコは暇さえあれば部屋に帰って寝られるわけだが、決意を新たにしたモンスターはそんな様子にじっと耐えている。そして、夫の役目は妻のサポート、子供とその母親が最優先、と念仏のようにブツブツ呟いていた。

「ねえ、だけどみこっさん、宇宙と彼方が嫉妬しない?」
「今から女の子には優しくするんだよと刷り込みを始めてるから大丈夫」
「大好きなパパが女子ーってはしゃいでても?」

は心配しているけれど、ひとまず宇宙と彼方はパパとの暮らしが楽しいのですっかり落ち着いて、最近では幼稚園から帰るとアマナと寿里と遊ぶ日々である。

「もちろんオレはふたりのパパだけど、女の子が大好きで大事にしてることを隠すつもりはないしね」

生まれて数日でふたりの男に奪い合われていたコハルが寝たので、尊は声を潜めての隣に腰を下ろした。この日は土曜で、例によってちびっこバスケ教室に参加のカズサと信長は不在。頼朝がコハルを部屋に連れ帰ったので、エンジュとセイラちゃんも集まってきた。新九郎は庭で遊ぶアマナたちを見に行ったし、尊は遠慮なく女好きだと宣言した。

「そういえばぶーちんが言ってたね、みこっさんは女の子に関しては玄人だって」
「玄人?」
「そう。女を見る目が玄人なんだって」
「オレが玄人っていうより、みんなが素人なだけだよ」

セイラちゃんが首を傾げているので、尊はちょっと不満そうに腕を組んだ。

「何年か前に仕事関係の席で、なんかすっごい勘違いしてますーって感じの人がいてさ。ファッションとか話すこととか、何から何まで浮ついてて、とてもじゃないけど一緒に仕事したい人じゃないなあって思ってたの。でね、その人『オレ女好きなんで〜』って言うんだよね」

相手はかなり年上で、仕事の関係上放り出せなかった尊は不愉快になるとわかっていても彼の話を聞かねばならなかった。そんな愛想笑いの尊に彼は、自分は無類の女好きなのだと言い出した。

「でもね、身近な人でも、芸能人でも、要するに若くて可愛い子が好きなだけなんだよ。しかも小柄でサラサラストレートの美少女。たぶん本人はアラフィフってところだと思うけど、普通に18歳くらいの子と付き合いたいようなことを言ってた」

セイラちゃんが細めた目で「国が国なら合意の交際でも犯罪だな」と突っ込む。

「だよねー。だからつい、試しに30代、40代、50代って年代を上げて女優さんなんかの名前を出してみたの。そしたら、まあ30代ならなんとか、的な答えが返ってきて、オレもう可笑しくて可笑しくて、笑うの我慢するの大変だった。それ女好きじゃないじゃん?」

話が見えたセイラちゃんもニヤリと口を歪めた。なるほどな。

「いやもう言っちゃいかんと思いつつ、そうなんですか〜女好きって言う割に普通ですね〜って」
「言っちゃったの」
「そう。じゃあお前は50代でもイケるのかよっていうから、はい、って」
「愚問だな〜」
「オレ、彼女の年齢って最高で56だし」
「それ、逆にバカにされたんじゃないの……?」
「もちろん」

相手はそれを聞くなりそれはゲテモノだとか、オレは普通、お前は異常と喜び始めた。

「ほんとに、何かを喋る時っていうのは、慎重にならないといけないよね。その56の彼女って、その人の会社の、社長だったんだよね。まあだからオレが愛人やってたくらいの付き合いだけど」

とセイラちゃんとエンジュは一斉に吹き出し、小さく拍手をした。

「社長のことですよ、社長ゲテモノなんですかって言ったら真っ青になってた」
「スカッとする話だけど尊くんて結局何歳まで平気なの」
「試したことないからわからないけど、オレ別にもう体の関係なくても付き合えるからなあ」
「あーわかる。オレももう体の関係とかなくても超高齢でも好きなら付き合える」

最近恋愛や女性観では気が合うエンジュも腕組みで頷いた。特にこのふたりは今子供に夢中になっている状態なので、性愛と恋愛は緩やかに分離をしていて、とりあえずのところは共存できている。

「オレの方が全然『女好き』だと思うでしょ〜? コハルみたいな赤ちゃんから、うちのばあちゃんみたいな人でも、みんなみんな『女の子』って感じがするんだ。全ての女性の中にアマナみたいな幼く無邪気な女の子だった時代があると思うと、それを手ひどく扱うようなやつが本当に許せなくてね。特にウサコにはそういうの、ずっと感じてて」

とエンジュは少し俯いてため息を付きつつ頷いた。

「もちろん誰かにひどいことするってことに男女は関係ないけど、女はバカにしていいと思ってるようなのって、ほんとに多いから。口を挟めるときなら言うようにしてるし、だからと言って女の子ってだけで庇うようなこともしてないけど、点数稼ぎなんだろみたいに思われることが殆どでさ。その辺は歯がゆいよ。お前どっちの味方なんだよって男に言われると本当にげんなりする」

これが新九郎の元で育ったというのに愛妻を持たない尊という人物に出た「愛情の形」である。

信長はもちろん、頼朝もウサコと結婚してからはよく「さすがに新九郎さんとこの子だねえ」と、その愛妻ぶりを微笑ましくからかわれてきたけれど、尊に関しては「まあ、みこっちゃんはあんな美形だから女の子なんか掃いて捨てるほど寄ってくるだろうしね」で済まされていた。

だが、新九郎の元で育ったので、尊はそんな風に「掃いて捨てる」のが大嫌い、風俗業界も大嫌い、信長や頼朝よりもさらに強く「女性が虐げられている」ことを過剰に嫌悪する傾向がどんどん強くなっている。それは父親と全く同じなのである。

むしろ尊は探すのが難しいくらい母親に似たところがない。その母親は尊がすぐ頼朝をからかう点について「私の妹そっくりで腹が立つ」とは言うが、そのくらいだ。

「宇宙と彼方には自由に育ってほしいけど、だからオレはそこだけは譲らないつもりでいるよ」
「いいんじゃないの。それ無理なく身につけば女の子は大歓迎じゃない?」
「もし男の方が好きだったらどうする?」
「それは好きにすればいいよ。オレはふたりを女の子をいじめない子に育てたいだけ」

おそらくは、アマナやコハルの存在があってさらに育った、尊の新たな「目的」だったのかもしれない。

ウサコとコハルが退院してきてからというもの、コハルの沐浴をやりたがる新九郎と尊、それは頼朝とウサコがやるべきだというとのちょっとしたバトルになっていた。ただし頼朝はカズサとアマナとツグミで慣れており、ツグミで数回やっただけのウサコが頼朝に介助してもらいながら頑張る、というのが基本になっている。

その上現在の清田家は朝と夕食前後が1番忙しいので、コハルの沐浴は午後ナカくらいに行われるのが日課になっていて、もう少しでそんな頃合いになる。はそれまでに雑用を片付けておこうと席を立って、おばあちゃんの部屋に向かった。

「おばあちゃん、ポットのお湯まだある?」
「ええと、まだ半分くらいあるからいいよ」
「でも今日は夜にテレビ見るでしょう。いつもよりたくさん飲まない?」
「あらそうだったかね。んじゃ足してもらおうかな」

おばあちゃんは見たい番組がない時はさっさと寝てしまうが、そうでない時はしっかり起きている。そして柿の種を食べながらお茶を飲む。そのために部屋には電動湯沸かしポットがあるのだが、それに満タンの水を汲みに行くのはしんどいので、や由香里がこまめに確かめに行っては補充している。

ペットボトル片手に戻ってきたは、満タン水位まで水を注ぐ。その背後で、庭で遊ぶアマナたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。どうやらリビングにいた尊とエンジュが加わったようだ。

「うるさくてごめんね。テレビ聞こえなかったら大きくしてね」
「いいよお。あの子たちの声なんかうるさいうち入んないもん」
「じいじ……新九郎さんはもっとうるさかった?」
「そりゃ男兄弟だもの、うるさかったよお。でもうちはほら、職人さんいっぱいいたから」

由香里が初めてこの家に足を踏み入れた時は10人以上の職人さんが食事をとっていて、居酒屋の宴会かと思うほどうるさかったと言っていた。その中に腕白な兄弟が混ざったら、それは確かにアマナたちの比ではないだろう。

すると、おばあちゃんが勢いよくくしゃみをした。

「あれっ、寒い?」
「うーん、そんな感じはしないんだけど」
「今セイラちゃんお風呂洗ってるから、終わったら診てもらおうね」
「大丈夫じゃないのお。鼻がムズムズしただけよ」
「そう言って放っといたからヨシちゃんは入院するはめになったじゃん」
「まあそうなんだけど」

おばあちゃんも80代後半、日々の小さなサインが大事に繋がる可能性は低くない。本人の意向もあって、無理を強いるほどの健康維持は行っていないけれど、いつかその時が来るまでは苦痛のないように、というのが基本方針だ。なのでこの夏、風邪が悪化して危うく三途の川を渡る寸前だった親友のヨシちゃんの轍を踏ませてはならない。

セイラちゃんの専門は外科だが、基本的な診察は出来る。なので彼女は毎日のようにおばあちゃんの診察をしては、かかりつけ医に診てもらう必要があるかないか程度の診断をしてくれていた。

「でも、もうこんな年だもの、ダメならダメでいいんじゃないのかね」
「それとこれとは別。おばあちゃんが苦しんだら正二郎さんも悲しむでしょ」

正二郎さんは新九郎の弟である。元ネタは毛利元就の通称、少輔次郎をもじったものだ。病に倒れた親方の方針に納得がいかず、新九郎に後を任せてこの家を出ていった人だが、兄や母との関係は悪くない。彼が下請けから独立するまでを床に伏した親方にバレないよう支援した新九郎と由香里の努力の結果だ。おばあちゃんも正二郎さんの支援は積極的にやって来た。

「新九郎も正二郎も孫がいるおじいちゃんだもん、もういいわよ」
「そうかなあ。ひ孫たちも悲しいと思うよ」
「まだわかんないでしょ」
「カズサはもうわかるよ」
……カズくんは、お父ちゃんに似てるからねえ」
「えっ?」

おばあちゃんは家族の呼び方に特徴のある人だ。基本的に最初に覚えた呼び名を変えない。由香里はずっと由香里さん、はずっとちゃん、ふたりが母になっても祖母になっても、お母さんだのおばあちゃんだのとは決して呼ばない。なのでこの「お父ちゃん」は信長のことではない。親方だ。

……もちろん私は親方に会ったことないけど、カズサは親方に似てるの?」
「顔は似てないけど、そっくりよ。だからカズくんはいい男になるよお」
「おばあちゃん、親方のことほんとに好きなんだね」
「あらだっていい男だもの。だから神様にとられちゃったのよ」

これを口さがない人々は、親方が早逝したからそんなことが言えるんだ、思い出が美化されてるだけ、そんないい男はこの世にいるわけがないと言う。しかしおばあちゃんはもちろんのこと、親方がいい男だったというのはヨシちゃんも言うのだ。

とはいえおばあちゃんとヨシちゃんは親方がどういい男だったかという具体的なことは話さない。新九郎は父親を敬愛して育った息子だが、母親たちがどういう意味で親方をいい男だと言うのかはほとんど聞かされていないらしい。なのでにとって親方は未だ謎の多い人物であった。

「駆け落ち、だったんだよね?」
「そんなかっこいいもんじゃないわよお。結婚を反対されたから爪弾きにされてただけ」
「どっちの家からも?」
「そう。まああたしの家はろくでもない貧乏な家だったけど」

は由香里に聞いた話を思い出す。そもそも清田家というのはもっと内陸の方にある大きな家だったらしいというのだ。一族で商いをしていて、分家は農業を営み、村がひとつ清田だらけというような家柄だったという噂話のような伝承がある。

だが、新九郎の祖父の代で商いが傾き、一族は神奈川県内にそれぞれ散らばっていった。親方は本家の跡取りだったそうだが、そうして駆け落ち同然におばあちゃんとの結婚を選んだので、実家からはいないものとされ、それは今でも変わらないらしい。本家だという家との付き合いは親方の代から絶えて久しいので、新九郎もそっちの親戚筋のことはよく知らないという。

……お父ちゃんは体が弱いことが恥ずかしかったのね。子供の頃からまともに学校も行かれないくらいだったくせに、大工になって。お父ちゃんの昔馴染みなんか新九郎を見て、なんで親方からあんなゴリラみたいなのが生まれてくるんだ、って目をひん剥いてたのよ。新九郎たちのガタイがいいのはあたしの方の血筋なんだけどね」

なんと。信長に聞いてもよくわからんで済まされていたことが次々に明らかになるので、は余計な口を挟まずに相槌を打つ。病弱なことを恥じて真逆な職業を選んだとは確かにカズサに似ているし、親方も背が高かったとは言うが、清田家男子の高身長はおばあちゃんの方の遺伝だったか。

……なんで反対されたの?」
「そりゃあたしが労働者相手に商売してたからよ」
「でもそれ、食堂かなんかだよね?」
「夜遅くまでやってたからお酒も出してたもん。かわいい女の子雇ってね、儲かってたんだよお」

それも初耳だった。はメモを取りたい衝動に駆られつつ頷く。

「そのうちの店で働いてた女の子が親方の妹だったの」
「えっ」
「親方は妹を連れ戻しに来て、それで知り合ったのよ。大工さんだっていうのに洒落た人でね」

親方が妹を連れ戻しに来たというからには、それなりの店だったんだろう。反対されたのはそのせいか。しかもおばあちゃんは「うちの店」と言っている。おばあちゃんが個人で経営していた店ではなくて、家族と一緒にやっていたとか、そんなところかもしれない。

「妹を連れ戻しに来たのにお父ちゃんの方があたしと親しくなっちゃったから、ずいぶん言われたらしいんだけどねえ。お父ちゃんも頑固だから、譲らなくて。お父ちゃんの家がマトモな家だってわかったらうちも目の色変えてね。持参金が入ると思って高価なもの買っちゃったりして、だけどお父ちゃんほとんど身ひとつで家を出てきたからそんなものないし、そしたら手のひらを返して反対し始めてさ」

そんな思い出話をするおばあちゃんはしかし、やけに楽しそうだ。そうやって一緒になった親方との生活は楽しかったんだろう。親方の師匠が屋根から転落して独立せざるを得なくなったのは新九郎がまだ幼い頃の話だ。親方の弟も一緒に大工を志して働いていたさなかのことである。

以来おばあちゃんは「女将」としてこの家をひとりで切り盛りしてきた。

……お父ちゃんが亡くなった時も、形見だの遺産だのって、揉めたのよ」
「でも親方の遺産っておばあちゃんと新九郎さんと正二郎さんのものだよね」
「だけどよこせって言うんだもの。位牌まで取られそうになったのよ」

はまた黙って頷く。が清田家に出入りするようになった頃から既におばあちゃんの関心は幼馴染のヨシちゃんと遊ぶことと、親方の位牌だけだった。むしろなぜそんなに位牌だけに執着するのかというほど、遺品より位牌を大事にしていた。それは取られそうになったからだったのか。

「もう、そろそろいいんじゃないかと思うんだけどねえ」
……親方がまだダメって言ってるんじゃない?」
「あたし、もう充分なんだけど。まだダメなのかしらね」
「ヨシちゃんもつまんなくなっちゃうよ」
「ヨシちゃんはカンちゃんがいるからいいんだよ」

由香里によれば、やはり付き合いが殆どないおばあちゃんの家系は長寿が多いとかで、病弱な親方に先立たれたおばあちゃんであるが、特に深刻な病を患うこともなく足腰も言うほど弱らず、本人は親方の元へ行きたいようだが、それはまだ叶いそうにない。

由香里は嫌うが、ヨシちゃんの彼氏であるカンちゃんはそんなおばあちゃんを気遣っていて、何かと言うと一緒に遊びに連れ出してくれるのだが、しかしおばあちゃんにはもう何十年とパートナーがいないのである。ほしいとも思わないんだろう。

どうしても親方が好きなのだ。

新九郎以下脈々と受け継がれる一途に人を思う性格はここに源流があるのかもしれない。

「おばあちゃんは、親方が亡くなった後にいいなって思う人いなかったの」
「ばあちゃんはお父ちゃんが世界で一番好きなんだよ」
「そっかあ。親方は幸せだねえ」
……だけどたぶん、お父ちゃんはあたしのことはそんな風に思ってなかった」
「えっ?」

驚いたから少し顔をそらしたおばあちゃんはぼそぼそと女性の名を3人挙げ、そして最期に「由香里さん」と言った。の全身の血が氷のように冷たくなる。

「そりゃあ浮気してる暇なんかないのよ。だけどねえ、あたしが思うほどお父ちゃんはあたしのこと好きじゃなかったと思うし、あの人は由香里さんのこと大層気に入ってたから」

確かに親方は新九郎に対して由香里を「最高の女だから手放すな」と言ったそうだが、由香里本人の回想では特に可愛がってもらったとかいう記憶もないようだったし、頼朝たちが生まれ、親方自身も病に倒れてからはほとんど接触がなかったと新九郎も頼朝も記憶している。

だけでなく、息子である新九郎はふたりを「あの時代にしては珍しいおしどり夫婦だった」と言うし、は背筋が震えてきた。一体どっちが本当の親方なんだろうか。

……だから、早く向こうに行きたいのに、まだダメなのかしらねえ」

おばあちゃんは心底呆れたようなため息とともにそう吐き出すと、仏壇の中の親方の位牌をじっと見つめていた。物言わぬ位牌はただそこにあるだけだけれど、おばあちゃんはもしかしたらこんな風に「まだそっちに行ったらダメなの?」と問いかけ続けているのかもしれない。

背中の冷たさが取れないだったが、廊下からセイラちゃんの呼ぶ声がしたので、診察をお願いと言ってその場を代わってもらった。空になったペットボトルを手に廊下を行くの耳に、おばあちゃんの「由香里さん」という声が何度もこだましていた。