エバー・アフター

10

試合までは一応時間がある。集合は10時、会場の最寄駅にて。普段なら公延と一緒に行くところだが、今日はが暴れているのでひとりで行くとメールにはあった。

こんなところに来て、どうするつもりだというんだろう。広いホームのどこにいつ入ってくるかもわからない、ギリギリにやってきてすぐに乗車してしまうかもしれない、それは今いるこの場所から見えるところとは限らない。あの家の様子ではグリーン車なのではと考えてそのあたりにいるが、それも定かではない。

それに、他に誰がいるとも知れないのに、なんでこんなことをしたんだろう。相手方、宗像家、もしかしたら弟もいるかもしれない。がいうところの耄碌ジジイもいるかもしれない。それが集団でいたとして、自分は一体何をするつもりなんだろう。

自分が何をしたいのか、まったくわからない。こんなことは初めてだった。バスケットを始めて、山王工業に憧れ、インターハイに憧れ、全国制覇が夢になった。それは常に明確な目標として頭上にあって、それが細分化されて、海南に勝ちたい陵南に勝ちたいと、自分の進むべき道はいつもすぐそばにあった。

だが今、なぜ自分がここにいるのかわからない。どうしても行かなきゃいけないような気がして、体が引っ張られるような気がしながらここまで来てしまった。だから、どうしたらいいかわからないし、正直、何をしたいという気もなかった。だけど、立ち去ることも出来ない。

なぜか、美須々に会いたかった。

公延のメールに「後悔しないか?」とあった。正直それもわからなかったけれど、そう言われれば後悔するような気がしたし、そんなことを考えていたら、美須々にはもう二度と会えないのかもしれないということが、無性につらくなってきた。会えないだけじゃない、たぶん連絡すらとれなくなる。

美須々に会えば、この迷子のような自分も行き先を見つけられるんじゃないか――そんな気がした。

肩にスポーツバッグを引っ掛けたままの赤木は、少し背中を丸めてホームにひとり佇んでいた。発車時間がどんどん迫ってくる。ホームを探すべきか? 身長のおかげで多少は広く目が届くのだし、動かない方がいいか? そんなことを考えてまた冷や汗をかきそうになっていた時のことだった。

「あれっ、あの、もしかして――
「え?」

ふいに声をかけられて、声のした方に顔を向けると、やたらときれいな顔をした男が目をまん丸にして赤木を見上げていた。赤木もピンと来た。周防だ。が言うように、かなりの美少年だ。は家柄の良い藤真だと評したが、細身で長身、藤真より神に雰囲気が似ていた。

「ええっと、ちゃんの、じゃなくて、湘北の?」
――あ、ああ」
「もしかして……あのマフラー?」
「え?」
「赤木くん!?」

周防は赤木を見るなり全てを読み取ったようだったが、その後ろからやって来た美須々が悲鳴に近い声を上げた。肩にボストンバッグを担ぎ、スーツケースを引きずっている。黒と白の直線的なラインのワンピースに髪をハーフアップにしていて、足元には硬い音を立てるパンプスを履いていた。

「美須々、お友達か?」
「え、ええ、大学の同期で」
「大きいなあ! 君もバスケ?」

これがそのお兄ちゃんというわけか――。赤木は小さく頷いたが、言葉が出なかった。見た目もいいが、とにかくどこから見ても好青年という人物だ。だが、お兄ちゃんは手ぶらで、赤木はそれがちくりと引っかかった。美須々は大荷物だというのに、持ってやらないのか。

お兄ちゃんはにこにこしているが、美須々は何かしら怯えているような顔をしていたし、周防は少し離れた場所で険しい顔をしていた。赤木はこれも気になってしまって、つい目を動かした。周防のこの態度は一体――

「周防もすごい選手だって聞くけど、いやあ大学生ともなるとこんなに大きい選手がいるんだね」
「オレは別にすごくないよ、たぶん彼の方がずっと上」

周防は殆ど睨むような顔をしていた。お兄ちゃんは気付いていないのか、まだにこにこしている。

「そんなことないだろー。周防だってずっとインターハイ出てるじゃないか」
「出てたってベスト8にも入らないんだから、大したことないよ。こっちはそういうレベルじゃないから」
「えっ、そんなにすごい選手なの?」

それにしてもお兄ちゃんは喋りっぱなしだ。見つけたのは周防だが、赤木は一応、美須々の友人のはずである。それなのに外してやろうという気がないのか、優しい笑顔でぺらぺらとバスケットのことばかり喋っている。その勢いに赤木も美須々も口を挟めなくて、お兄ちゃんと周防が喋っているのを聞くばかりだった。

そうしている内に、発車時刻が迫ってきてしまった。お兄ちゃんは腕を持ち上げると腕時計に目を落として時間を確かめる。見るからに高価な時計だった。お兄ちゃんは全身高価なもので見繕いされているように見える。時間を確認したお兄ちゃんはまたにっこりと笑う。

「じゃあそろそろ行こうか、周防、後は頼むよ」

お兄ちゃんは美須々の肩をぽんと叩くと、グリーン車のドアに向かって歩き出した。美須々もまともに顔を上げられないままスーツケースを引きずって歩き出した。周防も苦々しい顔をしているが、スーツケースに手をかけて手伝ってやりつつ、赤木を何度も振り返っていた。

その時のことを赤木はあまり覚えていない。ほとんど無意識だった。お兄ちゃんが乗車し、それを追って先に乗り込んだ周防がスーツケースを引き入れる手伝いをしていて、美須々はスーツケースを一生懸命持ち上げている。その美須々の背中に、赤木は声をかけた。

「美須々――

騒がしいホームの中で、だけどその声は美須々の耳に届いて彼女の手を止めた。急にぐらついたスーツケースを支えた周防の目が飛び出しそうなほど大きく見開かれている。彼にも聞こえたらしい。そして、美須々はゆっくりと振り返り、少しだけ離れた場所にいる赤木をひたと見つめた。

初夏の風が吹き込んで、美須々の髪が舞い上がる。ホームに発車のベルが鳴り響く。美須々が来ないので、お兄ちゃんが周防の後ろから顔を出した。舞い上がった髪がふわりと着地したその瞬間、美須々は引き寄せられるように赤木の方へ足を進めた。一歩、また一歩。

「おい、美須々、ふざけんな、お前何やって――

完璧な笑顔のお兄ちゃんが豹変する。その時だった。ドアを入ってすぐのところにいた周防が引き上げたばかりのスーツケースをホームに蹴り落とした。大きなスーツケースが派手な音を立てて転がり落ちる。その音に美須々が振り返ると、周防がお兄ちゃんを壁に押し付けていた。お兄ちゃんは振り解こうともがいている。

「美須々、行け! 後はオレがなんとかするから!」
「周防――
「周防、離せ、ふざけるな! こんなことして――
「早く行け! 自分のことくらい自分で決めろ!」

叫ぶ周防の言葉に押されるようにして、美須々は後ずさる。その目の前で新幹線のドアが閉まり、お兄ちゃんと格闘状態の周防を乗せたまま、新幹線は走り出した。ホームには転がるスーツケースとボストンバッグの重みで斜めに傾く美須々、そしてそれを呆然と見ていた赤木が取り残された。

新幹線が完全にホームから出てしまうまで、ふたりとも動けなかった。だが、一陣の風を残して新幹線が走り去ると、赤木はスーツケースのところまで歩いて行って、引き起こすとまた戻ってきた。美須々の正面である。

「あ、赤木、くん」
「弟、大丈夫だよな」
「は、はい、周防なら、きっと大丈夫です」

赤木は手を伸ばすと、美須々の肩からボストンバッグを取り上げた。美須々の傾きが戻る。

「これから、試合なんだ」
「えっ」
が木暮の部屋で暴れてる。今、呼ぶから、あいつと一緒にいてくれ」

言いながら、赤木はまた手を伸ばして、美須々の頬に触れた。美須々の目から涙が伝い、赤木の手に自分の手を重ねる。赤木の指にも涙が伝い、そしてこぼれ落ちた。

「夕方頃には戻る。その頃になったら、オレの部屋で待っててくれないか」
「赤木くん――
「どこにも行かれないだろ。嫌じゃなかったら、オレの部屋にいてくれ、美須々」

美須々は顔を歪めて泣き出した。その頬を、赤木はそっと撫でた。

公延が試合に出かけてしまったので、は公延のアパートで腐りきっていた。東京駅まで行って美須々を誘拐してきたいと一晩粘ったが、公延はダメだと言い続けた。試合に行かなければならないというのに、ギリギリまでを羽交い締めにしていた。おかげでもう間に合わない。

新幹線の発車時刻が過ぎてしまうのをぼんやり眺めていただったが、ふいにかかってきた着信の画面を確かめると、慌てて通話ボタンを押した。こちらも試合に向かっているはずの赤木からだった。赤木から着信があるのは基本的に公延に何かあった時だけ。はにわかに焦った。

「赤木くん、どうかした? 公ちゃんに何か――
、急いで東京駅まで来てくれないか」
「えっ、東京駅? ……え、ちょ、まさか!」

赤木の声は落ち着いているが、はその声を聞くなり腕が震えだした。まさか、まさか。

「ああ、今一緒にいる」
「あか、赤木くん、嘘」
「もうここを出ないと試合に間に合わないんだ。、すまない、頼む」
「わかった。すぐ行く。必ず行くから、安全なところに置いたら、赤木くんは試合に行って!」
「ありがとう、、お前がいてくれてよかった」

こんなに優しい赤木の声を聞いたのは初めてだった。は通話を終えると携帯をバッグに放り込み、慌てて身支度をし、通話を切ってから3分とかからずに公延のアパートを出た。駅へ向かう道を走るは、止めどなく溢れてくる涙を抑えられなくて、泣きながら走った。

最寄り駅から乗車できた所でも美須々に連絡を取り、東京駅に付く前にも場所を確認し、は1時間ほどで無事に美須々と合流出来た。ふたりとも顔を見るなり泣きながら抱き合った。

周防たちの乗った新幹線はひかり。次の停車駅は品川なので、もしそこでお兄ちゃんが下車して山手線などで戻ってきてしまったらと考えた美須々は、一旦入った喫茶店を出て、有料トイレにずっと隠れていた。これならお兄ちゃんは入って来られない。

女子トイレでわんわん泣きながら抱き合っていたので、他の利用者に心配され、興奮状態だったがつい「親の決めた許嫁に連れ去られそうになってたこの子を彼氏が奪いに来た」とぺらぺら喋ってしまい、有料トイレは一時大いに盛り上がった。

一方その頃、5分遅れで集合場所に到着した赤木は遅刻を詫びると、公延のところまでよろよろと近付いてきた。

「どうしたよ、珍しいな、疲れてるんじゃないのか」
……東京駅、行ってきた」
「とうきょ――嘘!?」

会場へ向かってゾロゾロ歩いている集団の最後尾で、公延は素っ頓狂な声を上げた。赤木は照れる気力もなくて、試合のためにスイッチを切り替えようとしている。だが、公延はのように嬉しくなって、妙にドキドキして、わけもなく泣きたくなってきた。

「間に合ったのか? 今どこに――
「勝手にすまん、に頼んだ。オレの部屋にいる」
「いやそんなこと気にするなよ、そうか、無事なんだな、お前、よくやったな、ほんとによくやったな……!」

公延は赤木の肩を掴んでぐらぐらと揺さぶった。何しろ中学に入ってすぐに知り合って8年、赤木がバスケットや学校以外のことで――まあ特に女の子のことで、自ら行動を起こしたのはこれが初めてだ。公延はそれが嬉しくてならない。には関わるなと言ったけれど、これが赤木と美須々の選択ならそれでいい。

「でもオレは何もしてないんだ。弟がな、相手を新幹線に閉じ込めたまま出発して」
「おおお、なんかすごい話になってきたな。大丈夫か、試合」
「ああ、それは大丈夫。……なんだか、頭がスッキリしてるんだ」

公延が赤木の横顔を見上げると、確かに曇りの取れた穏やかな顔をしていた。今ここで何が起こったのかを追求しなくても、この様子では後でから延々と話を聞かされるに違いない。公延は気分がいいものだから、それも大歓迎という気になってきた。

「じゃあいい試合して勝って、さっさと帰ろうぜ!」
……ああ、そうだな」

自分がどこにいるのかもわからない迷子の気がしていた赤木だったが、少しだけ行き先が見えてきた。それは燃えるような意欲ではなくて、向かいから清冽な風が吹いてくるような、そんなクリアーな意識の中にあった。この日、赤木たちはいつになく良い試合展開で快勝、赤木本人も絶好調で、たまには遅刻した方がいいんじゃないかと言われる始末だった。

「赤木くんの部屋に行けばいいの?」
「あ、そうなの、これ」

美須々はとふたりでスーツケースを押しながら、赤木から預かったアパートの鍵を取り出した。あたりに気を付けつつ、品川と繋がる路線には近寄らないようにしてふたりは地下鉄に乗り込んだ。赤木のアパートも公延のアパートも全く関係ない路線だが、できるだけ遠回りをして帰るつもりだった。

そうして2時間近くかけてふたりは赤木のアパートに戻ってきた。当座の身の回りのものをスーツケースに詰め込んでいたので、それを駅から引っ張って来るのにも骨が折れ、アパートの部屋に運び込み終えると、美須々とは床にひっくり返った。疲れすぎて座っていられない。

そこへ美須々の携帯が鳴り出した。周防からだった。

ちゃん、今新宿にいるらしいの。ここに呼んだらだめかな」
「お兄ちゃん完全にまけたの?」
「一応ひとりで新幹線から出たそうだから、大丈夫じゃないかって」

念のため、は最寄り駅の路線ではなく、少し遠い路線の駅を指定した。後はタクシーで来いと言って、はのそりと起き上がった。キッチンに行って勝手にコーヒーを淹れる。電気ケトルからもうもうと湯気が噴き出している。日曜の午後、赤木のアパートは静かだった。

「ベルちゃん、少しゆっくりしたら、これからのこと考えようね。私も手伝うから」
「あ、ありがとう。本当に……なんて言ったらいいか」
「それは気にしないで。私、中学の頃から赤木くんに変な虫が付けばいいのにって思ってたから」

変な虫呼ばわりされてしまった美須々だが、の言いたいことはわかる。コーヒーを受け取って一口飲むと、大きくため息をついた。安心したのと、とうとうやってしまったという虚脱感で体中の筋肉が緩んでいる気がした。

「それで、結局赤木くんと周防は何したの」
「ええとそれが、実は赤木くんは特に何もしてなくて」

移動中はあまり声を立てないようにしていたので、は何が起こったのかは聞いていなかった。昨夜の告白の件も含め、美須々の説明を受けたはしかし、赤木の変化に嬉しくなって頬を緩めた。周防も頑張った。

「何かに逆らうってことが怖かったのね。自分ではそんなこと到底出来ないって思ってて、だけど赤木くんに名前を呼ばれたら、そんなことどうでもよくなっちゃって。周防が助けてくれたのは意外だったけど、あの子がいなくても私、新幹線には乗らなかったと思う」

そしてそれから1時間ほどで周防がやって来た。彼もへとへとに疲れていて、部屋に入るなりがっくりと膝から崩れ落ちた。顔が腫れ上がっていて、首や腕にも引っかき傷がある。お兄ちゃんと激しくやり合ったらしい。

「品川で下ろしちゃったら絶対捕まると思ったんだよ。だからせめて新横浜までは連れて行こうと思って」

しかし、お兄ちゃんも引き下がらないので周防は小田原まで格闘を続け、そこで隙を突いて下車。社内にお兄ちゃんを残した周防はロマンスカーで逃げ帰ってきた。涙ながらに礼を言う姉に手当をしてもらった周防は、現金なもので、すぐにの隣に滑り込んだ。

「もーオレ超頑張ったんだよ。ていうか知ってる? オレ一週間後、予選なんだよ? シードなんだけど!」
「よく休めたねえ」
「家の問題で行かれませんっつってガチャ切りしたよ! スタメン外されるかも〜ちゃん助けてよ〜」

彼もお兄ちゃんと戦ってまで姉を逃したのは勢いのヤケクソだったようだ。困り切った顔でに抱きついて、と美須々のふたりに同時にひっぱたかれた。だが、顔を傷だらけにしてまで美須々を助けてくれたので、はよしよしと頭を撫でてやった。ついでに昼食も作ってやった。

「それで、美須々どーすんのこのあと」
「それは、これから考える」
「えっ、マジでノープランだったの!?」
「あんたじゃないんだから、しょうがないでしょ。だいたいあんたが助けてくれるとも思ってなかったんだし」

に作ってもらった炒飯をがつがつ食べながら、周防は呆れた顔をした。

「ま、美須々はノープランなんてしたことないだろうから、いっか。一生を左右する問題だけどオレ関係ないし」
「元気が出てきたらゲスになったな貴様。てかあんたもどうすんのよ、宗像家にいられるの?」
「うん、だからこの後学校行って監督に泣きつく。この怪我がある内にやらないとだからね」
「あんたのその要領のよさがほんと腹立つわ」

それでも周防は赤木の件について姉をからかうようなことはせず、湘北の山王撃破チームのひとりなのだとわかると、一度話をさせろと言い、隙を突いてまたに抱きついてひっぱたかれ、満足そうな顔をしてアパートを出て行った。これから学校に行って一芝居打つのだ。

「腹は立つけど今日ばっかりは周防がいてくれてよかったね」
「何考えてるのかわからないけど、ほんとね」
「じゃあベルちゃん、私もそろそろ帰るよ」
「えっ、もう?」

確かに試合はとっくに終わっている時間だけれど、平均的に見て、彼らが帰ってくるまでにはまだ時間がある。

「木暮くんも一緒に戻ってくるんじゃない?」
「公ちゃんには私が連絡入れておくから大丈夫。……ベルちゃん、彼氏帰ってくるんだからね」

わざと避けておいただが、少しくらいなら、と言葉にしてみた。案の定美須々はみるみるうちに顔が赤くなっていく。勢いで逃亡したはいいが、さてこれからふたりきりだぞと言われると、どうしたらいいのかわからない。美須々はてっきりや公延もいてくれるものだと思っていたらしい。甘い。

「そんな、いきなり急には……
「急に? ベルちゃん、いつから赤木くんのこと好きだったんだっけ」

の言葉に美須々は眉を下げて肩を落とした。それはもう、既に始まっていたことだ。

「うん……もしかしたら、もうずっとずっと前なのかもしれない」
「だったら大丈夫だよ。その『好き』って気持ちはずっと一緒にあったものなんだから」

少し早めにが帰ってしまったので、美須々はひとり、赤木が帰ってくるのを待っている。宗像家からは着信もメールも来ない。周防もどうしたことやら。だけど、もうそれも関係のないことだ。宗像家の意向に逆らって逃げ出してしまったのだし、それはもう取り返しがつかないし、だけど後悔はない。

赤木と一緒にいたい。今はそれだけが望みだった。