エバー・アフター

06

ちゃんと授業に出るようになった美須々だったが、それまでの「宗像美須々」とはまるで変わってしまっていて、赤木が勘違いしたように、美須々は遅まきながら夏休みデビューでもしてしまって堕落したんだろうというのが大方の見方ではあった。

しかし実態は家族問題であり、一応そこからは距離を置けていて、外見の変化で言えば身を寄せている父方の叔母の家にはアパレル関係の仕事をしている従姉妹がいて、いわゆるコンサバ系であったのがカジュアルになってきたのはそのせいだ。

赤木が伝書鳩をするまでもなく、美須々はしばらくしてにも連絡を取り、気を揉んでいたは平日にもかかわらず公延たちの大学まですっ飛んできて美須々を抱き締めていた。

その後、本格的に宗像家から放り出されることが決まった美須々は、父方の祖父母の協力を得てアパートを借りることになった。少なくとも両親は、金もかかるし、そこまでする必要は感じていなかったそうだが、何しろ当主である祖父が正気を失っている状態だ。面倒なのでひとり暮らししてこい、というわけらしい。

その引越しにしても、当然宗像家に婿養子の父親の親族は出入りできない。もちろん赤木も公延もダメ。ということでの出番である。ついでに地元の短大に推薦が決まりそうだという晴子も動員して1日で済ませることになった。荷物は少ないし、赤木と公延も新居の方で待機していて、そこから手伝うことになった。

「改めてすごい威力でした」
「だろうな」
「私、あのままちゃんが洗脳すれば引っ越さなくてもいいんじゃないかなって思ったよ」

新居でと公延が食事を用意している間、赤木兄妹と美須々はぼそぼそと喋っていた。宗像家に乗り込んだは、まずは美須々の両親を陥落させると、なんのつもりか野次馬をしに来た美須々の従兄弟とその親も瞬殺、あまりに長女宅が騒がしいので出てきた元凶たる祖父まで籠絡し、最後には曽祖父まで手懐ける始末。

「向こうを出るちょっと前に周防くん帰ってきたんだけどね」
「あれは家柄のいい藤真先輩よ!!!」

キッチンではカリカリしている。その向こうで公延が肩を震わせている。

「またかよ」
「でもほんとにそんな感じだった。顔が良くて愛想が良くて、もうするーっとちゃんにまとわりついて。だけどお兄ちゃんたちの話したらすごい食いつくし」

一瞬で宗像周防が嫌いになったは、自身とはほぼ関係ない湘北の自慢を始めた。赤木たちの世代が卒業した後も湘北は強かった。今も強い。秋月にいるなら神奈川の湘北といえばそれだけでどんなチームかよくわかっているはずだ。先日の国体でも東京は神奈川にコテンパンに負けている。

しかもの場合今年の神奈川の3年生スター選手には少し顔が利くし、そもそもその湘北のマネージャーが晴子である。自慢し放題だ。だが、周防の方もそれで怯むほど軟弱ではない。何しろ家柄のいい藤真だ。

「桜木くんたちに会いたいとか清田くんに会いたいとか、お兄ちゃんや牧さんに会わせてくれだの」
「妙に強い選手っていうのは、そういう風にメンタルが強く出来てるんだよな」
「周防のあれは小さい頃からなんですが、やっぱりそういうものですか」
「まあちょっと似たような例をよく見てたもんでな」

は周防の件も含めてしばらくカリカリしていたが、美須々は実家から完全に離れたことで気が楽になり、前にも増してにこにことよく笑うようになった。新居に越してしばらくの間はも頻繁に顔を出して、生活力ゼロの美須々にあれこれと教えていた。何しろ洗濯機を使ったことがなかった。

「って公ちゃんと赤木くんまで来る意味がわからないんだけどね」
「いいじゃん、飯はみんなで食った方がおいしいだろ」
「正直に作るの面倒くさいって言えば?」
「わ、私はいいんですよ、全然!」
「よくないでしょ、なにこの狭さ」

美須々の新居は典型的なワンルームアパートで、は公延を突っつきながらぶうぶう言っている。美須々と一緒にごはん作って食べようと思ってやって来たら、公延と赤木まで来た。ふたりぶんのつもりで買ってきたデザートが減るのでは面白くない。

「それにしても、ほんとにちゃんは何でもできるのね……
「ていうか今更だけどさ、なんでお前こんなに料理できるんだ?」
「公ちゃんがバスケばっかで構ってくれない頃に料理教室とか行ってた」

冷たい目のに赤木が吹き出す。公延が構ってくれなかった時間は結構長い。

「お菓子教室も行ったし着付けも習ったし、お茶とお花は飽きてすぐやめちゃったけど、プール通ってたこともあったし、クラフト教室も行ったし、パン教室も行ったし、市のカルチャースクール荒らしてたから」

ただでさえ器用貧乏なところに色んなアビリティがついて今のに育ち上がってしまったわけだ。だが、その指導を受けた美須々もの後を追いつつある。特別に器用ではないけれど、何事も教えられたことをよく守り、地道に練習するので上達が早い。

「オレもに料理習いだして半年くらい経つけど、もうベルちゃんの方が上手いな」
「公ちゃんは真面目にやるんだけど、自分ひとりだといい加減になるからなあ」

そんな会話にも美須々はにこにこ笑顔を絶やさなくなった。さらにと公延を仰天させたことには、以前にも増して美須々と赤木がふたりで過ごすことが多くなった。まだ不安定さが残る美須々が話を聞いて下さいと頼むと、用がない限りは赤木も断らない。美須々がすっかり赤木に懐いてしまったような感じだ。

しかしそれ以上に進展などはないまま、数ヶ月が過ぎた。一緒にいる時間が増えたので、美須々と赤木とと公延は自然と4人でクリスマスや年末年始を過ごし、赤木に至っては晴子が「ちゃんとベルちゃんがいれば安心だから帰省しなくてもいいよ」と言ってくる始末。

依然として宗像家と美須々の亀裂は埋まらないままだったが、本人は今が一番楽しいと言って憚らないし、赤木やが常に目をかけているので、心配には及ばなくなってきた。というところの、年が明けて2月のことである。年が明けてからは地元で湘北の3年生とべったりだったが、突然美須々宅にやってきた。

「ベルちゃん、バレンタインどうするの?」
「えっ、バ、バレンタイン!? どうするって私、その」

バレンタインにチョコレートなどを誰かにプレゼントする――という意識がほぼゼロの美須々はうろたえた。

「あげたい人いないの? 買いに行くなら一緒に行こうかなと思ってさ」
「そ、そんな、私別に……
「男の子だけじゃなくって、友チョコとか感謝チョコとか、色々あるじゃない」
「ともちょこ?」

それも知らなかった。というか美須々はひとり暮らしを始めてから自分専用のテレビというものを手に入れ、最近やっと民放局の区別が付くようになったという異邦人状態である。子供の頃好きなテレビ番組を見させてもらえなかったせいで、最近は古いアニメばかり見ている。お気に入りは世界名作劇場。

「私も一番いいチョコは公ちゃんにあげるよ。だけど、赤木くんや後輩の子たちにもあげるし、晴子ちゃんにもあげるし、ベルちゃんにもあげようと思ってるよ。そういうこと」

なるほど、と頷いた美須々はしかし、の目の前で顔が赤くなっていく。

「ベルちゃんも誰かにあげる?」
「ど、どうしようかな、ええっと」

頬をピンクに染めた美須々がもじもじしているので、はつい口を滑らせた。

「赤木くんにあげないの?」

美須々は驚くあまり、座ったまま2センチ位飛び上がった。顔はいよいよ真っ赤、目も赤い。

……ベルちゃん、間違ってたらごめん、赤木くんのこと好き?」
「わた、私、その、ちゃん、あのね」
「かもしれない、って感じ?」
…………どうしてわかるの?」

うろたえすぎて疲れた美須々はがっくりと肩を落として背中を丸めた。どうしても何も、でなくとも見りゃわかるのだが、内に秘めているはずの気持ちを言い当てられた美須々は大きくため息をついた。はニヤニヤしてしまいそうになるのを必死で堪えながら、美須々の背を撫でた。

「なんとなくそうなのかなーって思ってたから」
「そんな風に見えたの?」
「んーと、その、割と最初からそんな気がしてた」
ちゃん怖いよ」

確かには怖いが、今回の場合は当の赤木やその妹が飛び抜けて鈍いのであって、美須々の心の変化は実にわかりやすかった。むしろ喧嘩していた頃から一貫して態度が変わらない赤木の方がわかりにくい。公延もよくわからないと言うし、本人にもそんなことは聞けないので、知りようがない。

「こんな風に言ったらアレなんだけどさ、赤木くんも怖いじゃん」
「赤木くんが怖い?」
「人にも自分にも厳しいから。バスケのためとはいえ、普通はああまで出来ないよね」

そもそもがそれ以上に堅い美須々にはあまり感じられなかったかもしれない。

「だから誤解されやすい人でさ。去年の夏のさ、牧さんとか信長とかいたでしょ。あの人たちは後輩とかから思いっきり慕われるタイプなんだけど、赤木くんてそーいうのなくて。たぶんだけど、周防も慕われるタイプだよね」

姉のアパートにが出入りしていると聞いた弟は学校の帰りに顔を出すようになった。2度ほどがいる時に当たった彼は姉の言うことなど聞かずに纏わりついていた。ならば、とも清田のように扱うことを決め、以来、周防などと苦々しく呼び捨てている。

「どうしてなのかな。私には何が違うのか……
「だから、ベルちゃんて偉いなあと思うんだよね」
「偉い?」
「赤木くんのああいう怖さとか堅さとか、そういうのに惑わされなかった」
「そ、そういうことなの?」
「だって、そう、赤木くんのどういうところがいいなって思う?」

また美須々は飛び上がり、せっかく落ち着いていた顔色をまた真っ赤にした。だが、と付き合うようになってからの美須々は、一般的に女の子が感じるようなこと考えるようなことについては、なんとかして自分の中から答えを引き出そうとしている。そこから逃げたりはしなかった。

「どういうって、その、ええっと、私が家のことで困ってた時に、どう言ったらいいのかな、励ますんじゃなくて、頑張れとかも言わなくて、ちょっと違うかもしれないんだけど、気持ちはよくわかる、って、あんなのに立ち向かうことないぞ、って、言って、くれて――

少々興奮気味だったことも手伝って、美須々は真っ赤な目から涙を零した。

「それ以来よく話を聞いてもらってたりして、なんていうのかな、一緒に、いたいなって――

美須々は両手で顔を覆ってしまった。の問いに答えようとする中で、自覚のなかった気持ちを掘り当ててしまい、それを言葉にしてしまったら胸が一杯になってしまった。何がいいとか悪いとか、好みとか条件とか、そういうことじゃなかった。一緒にいたいなって、ただそう思った。

美須々が泣いてしまったので、はそっと膝を立てて抱きついた。遡ること2年前、高校とか大学とかそんな近い話じゃなくて、その先もずっとずっと一緒にいたいんだと言ってくれた公延の声が蘇る。は左手の薬指にあるホワイトゴールドの煌めきに少しだけ胸が痛くなる。

「ベルちゃん、チョコ、あげてみる?」

抱き締めてくれるの腕に縋った美須々は、鼻をぐずぐず言わせながら、何度も頷いた。

「で、なんで赤木ん家なんだよ」
「一応公ちゃんと赤木くんに日頃の感謝を込めましてご飯作ります」
「バレンタインってそういう日だっけ?」

バレンタイン近くの週末、に食材の買い出しを手伝わされている公延は不可解そうな顔をして荷物を抱えている。今日は赤木のアパートで4人で夕食ということらしい。一応バレンタインなのであれば、赤木とひとまとめにされたくない公延は少し面白くない。

「何言ってんの、公ちゃんにはちゃんと別に用意してあるよ」
「そっ、そんならいいけど」

確かが小学校低学年の頃からバレンタインのチョコは毎年あげているはずなのだが、それでも公延は嬉しそうだ。今年は少し奮発して一緒に食べられる高級チョコを購入済みである。というかむしろ自分が食べたいと思うものを選んだ。公延が全て食べるという選択肢はない。

「んで、ご飯食べたらベルちゃんを置いて帰ります」
「は!?」
「恋する女の子は頑張るよねえ」
「恋!?」
「やっぱりそういうことになったよ」

このところ、そんな勘繰りがあったことなどすっかり忘れていた公延は、呆気に取られてぽかんとしている。

「なんかもうベルちゃんがいじらしすぎて可愛くて私爆発しそう」
「どのあたりからそんなことになったんだ……
「本人が薄っすら気付きだしたのは去年のほら、家出の時。でもたぶん、そこじゃないよ」

は毎日のように喧嘩していると聞かされた時からそれを疑ってきた。結果としてそれは現実になり、赤木の方の気持ちが全く見えないものの、美須々の恋は動き出そうとしている。

「そんなわけで、いつもありがとうふたりとも!」
「あっ、ありがとうございます!」

赤木のアパートに到着する前からずっと緊張しっぱなしの美須々は、よく出来た作り笑顔のの隣で頬をヒクつかせながらぺこりと頭を下げた。予算の関係もあって、それほど豪華ではないが、美須々でもちゃんと作れる食事をは用意した。

「そんなに大したことしてないのに。なあ、赤木」
「2年前ならお前らのことでオレはずいぶん気を揉んだものだが……
「赤木くんはすぐそれなんだから」

緊張しすぎて美須々の笑顔が歪んでいるので、と公延はその赤木の返しに乗っかった。自分たちのことを餌にすれば、赤木も気兼ねがいらない。だが、そんなたちの話題で何かを思い出したらしく、赤木は学習机の引き出しからはがきを一枚持ってきた。

「宗像、わからない話ですまん」
「えっ、私は全然!」
「ふたりとも、大声は出すなよ。特に、口押さえとけ」

割と厳しい顔で釘を差した赤木は、はがきをと公延の前に差し出した。はがきを見るなり、ふたりはバチンと口元を押さえつけ、声にならない悲鳴を上げている。

「3日前くらいに届いたんだが……まあオレらの代1号だな」
「お祝い事ですか?」
「ああ。高校時代のライバルみたいなものなんだが、結婚したらしい」
「ふぁっ!?」

高校卒業後、実家の飲食店で修行をしている陵南出身の魚住である。赤木も公延も成人式の後に会ったばかりなのだが、言わなかっただけで決まっていたのだろう。はがきには紋付袴の魚住が白無垢の花嫁と並んでいる写真がプリントされている。

と公延の婚約だけでも驚いていた美須々は、つい変な声を上げてしまい、バチンと手で口を押さえた。

「さすがに結婚はお前らが最初だろうと思ってたんだけどな。思わぬ伏兵がいたもんだ」
「だとしても意外過ぎる展開だなコレは……
「オレはお前らと違って厳しい修行に励んでるんだとか言ってたくせに」

赤木たちが高校を卒業するまでは魚住などまったく面識がなかっただが、色々融通を利かせてもらえるというので、赤木に紹介してもらって何度か店を利用したことがある。一番近い所だとがアナソフィアを卒業した時や、公延の父の誕生日など。

「奥さん、陵南の人なの?」
「いや、詳しいことは何も。そのはがきが来ただけだからな」
「まあ、自営業だから、結婚は早くたっていいんだろうけどなあ」
「その嫁さんも大したもんだ。住所が変わってない。おそらく同居だ」
「うええええええええ」

露骨に嫌な顔をしたに、赤木と公延は苦笑いである。

「公ちゃん、私どっちとも同居なんて絶対嫌だよ」
「オレに言うなよ!」
「何だよ、どっちとも仲いいだろうが」
「同居なんかしたら昔に逆戻りじゃん! 意味ないよ!」

ひとり呆然としている美須々は、はがきの送り主やたちが平然と結婚について話しているのを、まるでテレビの中の出来事のように感じていた。自分の世界にはまったく縁のないことで、誰かが結婚をしたとかするとか、そんな話はもっとずっと先の未来の話だと思っていたのに。

結婚どころか目の前にいる人が好きかもしれないと自覚したばかりの美須々にとって、それはおとぎ話ほど現実感のない話だった。結婚てどうするの? いつしたいって思うの? そのはがきの人、もう決めちゃっていいの?

どのみち美須々が緊張でろくに話ができないので、と公延は地元の話で盛り上がっていた。

「そういえば、もうチョコ配ってきたのか?」
「配る?」
「そう、湘北の3年生と、アナソフィアの友達と、あと信長にもあげてきた」

赤木はまたブハッと吹き出す。とんだチョコレート行脚だ。

「清田は……なんとなく想像つくな」
「ご想像の通り大騒ぎだったけど、晴子ちゃんたちもいたしね」

高3の彼らは自由登校に入っているので、は平日の昼間に全員まとめてかつてのバイト先あたりに呼び出した。どう考えても流川は来ないだろうから、予め来ないなら自宅に押しかけると脅しておいたので、彼も渋々来た。さらにその場に清田まで呼び出したというからもえげつない。

このことは晴子にもよく言い含めてあって公延にも話していないが、出来ることならもう会いたくなかった流川は、正直にそう言い添えて、チョコレートを受け取ると同時にお返しを差し出してきた。スポーツブランドのハンドタオルだった。これならスポーツショップで買える。は、もう二度と流川と会うことはないのだと直感した。

そんな物悲しいエピソードからは一転、清田は赤木の想像通り大騒ぎだった。

「あのポジティブシンキングはちょっと見習うべきかも。本命と思ったらしいんだよね」
「ポジティブシンキングじゃないだろそれは。あれはただのバカだ」
「だけどすっ飛んできてみれば湘北の3年は全員いるし、桜木軍団もいるし、すごい顔してた」

公延は想像しただけで下を向いて震えている。その場にいて現物を見たかった。

「だけど、これでもう終わり。あの子たちともあんな風に会うことはもうないから」
……の方が寂しいんじゃないのか」
「そりゃあ寂しいよ。だけど、引きずっても傷つくだけだから。これで終わり」

公延も高校のクラスメイトの女の子のアドレスを削除した時のことを思い出した。学校を離れても個人的に付き合いのある晴子や今の美須々のようならともかく、高校を卒業して以来、あれだけ仲のよかった彩子や宮城とも、は疎遠になっている。世界は変わるのだ。

「じゃあ公ちゃん、帰ろっか」

食事は終わったし、話もきりがいいし、はわざと甘えた声を出した。美須々がまたぎくりと緊張するのがわかるが、もう後戻りはできない。打ち合わせ通り、は公延とふたりっきりになりたいオーラを演出して、食卓もそのままに赤木のアパートを出た。

これからは公延のアパートに行くから、後片付けは美須々が請け負う、という体だ。赤木は片付けなんか気にしなくていいと遠慮したが、は取り合わなかった。そして、去り際に美須々の手を取ってギュッと握り締めると、さっさと帰ってしまった。

緊張で足が震える美須々だったが、深呼吸をして雑念を振り払い、覚悟を決めた。