太陽と月の迷い路

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いくら夏休みでも普通科の高校生だけの編成である国体神奈川代表なので、月末になると合同練習は一旦休みになり、部活ばかりで課題の終わっていない部員は慌てて手をつける羽目になっていた。その点普段から計画的に予定を消化している宗一郎のようなタイプは、やっと遊べる夏休みの到来でもある。

とは言っても新学期直前の週末の2日間だけだったが、登校しての練習は休みになった。

それでも海南バスケット部の場合は外で自主練に励む者も少なくなく、宗一郎も本来ならそういうタイプだ。両日とも朝は走って運動公園に行くつもりでいるし、練習自体を全部止めるつもりはない。だが、そこまでだ。課題も終わっているし、頑張って制限した夏の小遣いもちゃんと残っている。

と花火大会に行くのだ。

あの日、央二郎に対して正直な気持ちをブチ撒けた宗一郎は、これまでに対して本気になりきれなかった理由を見つけた。央二郎が、文句のつけようのない王子様でヒーローだった兄がすべてを失って以来、自分もまた何かをなくしてしまったような気になっていたのだ。

そういう日々の中でどんどん遠くなる央二郎、自分の努力はいつしか実を結んだけれど、と親しくなればなるほど、彼女を手に入れたいという気持ちは閉じ込めるようになっていた。央二郎がの存在を嗅ぎつけてからはそれが加速した。

かつて央二郎のものでしかなかった、評価、賞賛、女の子からの視線。それが急に央二郎の元を離れて宗一郎のところに来てしまった。そしらぬ顔をしていたけれど、内心ではものすごく戸惑っていた。

部の中での評価、海南という神奈川ではあまりにも特別なチームにおける自分の役割、付いてくる結果、それは自分で望んで掴み取ってきたものだ。だけど、無関係な場所から湧いて出てくる賞賛も女の子の視線も、そんなものは央二郎と半分ずつでよかった。独り占めは居心地が悪かった。

けれど、そういう居心地の悪さのないところで親しくなったは、央二郎と半分ずつ――ではもちろん嫌だった。彼女だけは全部自分のものにしておきたかった。

なんでも央二郎と半分ずつでいいのに、という生まれついての感覚と、は独り占めしたいという気持ちがせめぎ合い、覚悟が決まらなかった。央二郎と半分ずつでいいものなら適当にあしらうことも出来たけれど、はそんなに簡単にも出来なくて、ずいぶん迷ってしまった。

でも、もういい。も央二郎も宗一郎にとっては替えの効かない唯一無二の存在で、どちらも両手に掴んでおきたいものだった。しかしとりあえずのところ兄は死ぬまで兄のままだ。少しくらい後回しになっても大丈夫。でもはそうはいかない。逃したら最後、二度と取り戻せない気がした。

か細い囁き声だけを残してが立ち去ってしまって以来、連絡も取っていなかった。合同練習があったので運動公園も足が遠のいていた。が藁にもすがる思いで2000円を握り締めていたのと同じで、宗一郎にも都合のいい口実がなかった。しかしそうやってぼーっとしていたら夏休みは終わる。

宗一郎は私室でベッドに横たわり、携帯を両手で掲げてへメッセージを送った。

花火大会は行きたい。と一緒に行きたい。だけど、何も変わらないままギクシャクしながらでは行きたくなかった。ふたりで選んだサマードレスを着たと手を繋いで、グリと遊びに出かけていた頃のように笑い合いながら花火を見上げたかった。願うことはそれだけだった。

だから花火大会の2日前に、少し早い時間に運動公園で待ってる、といきなり送りつけた。

そして以後、通知も切って過ごした。が来ないならそれでもいい。その場で時間が来たら確認して、断りのメッセージが入っていたらそれまでだ。その時は潔く諦めて国体のことだけに集中しよう、そう考えて宗一郎は目を閉じた。いつになく心臓がドキドキして、止まらなかった。

花火大会当日、宗一郎はジーンズに黒のTシャツという出で立ちで家を出た。のサマードレスが白だと知った央二郎が、お前が黒ならの白が引き立つから、と無理矢理着せてきた。ついでにシザーバッグも引っ掛けられ、しかも中に何やらこっそり手を突っ込んでいた。

家を出て自転車で走り出し、信号に引っかかったところで中を改めてみたら、案の定避妊具がたくさん出てきた。オレと違ってお前らはぼんやりしてるから、などとバカにするくせにすぐこれだ……と呆れた宗一郎は、簡単に飛び出たりしないように、内側のファスナーポケットの方に全部押し込んでおく。

央二郎にとってどの程度が「当たり前」なのかは知らないけれど、少なくとも今日は必要ない。宗一郎は気を取り直して運動公園へ向かい、いつもの場所に自転車を止める。ジーンズで、しかもボールも持たずにここへ来たのは初めてだ。なんだか少し恥ずかしい感じがする。

空には雲が多くて、蒸し暑いけれど日差しは強くない。風もある。いつものベンチに腰を下ろして、通知を切り2日間放置していたメッセージを確認する。からは、何も来ていなかった。その代わり部員から大量に入っていたし、央二郎からも来ていたし、未読数は大変なことになっていた。が、そのあたりはひとまず放置だ。

からのメッセージはなくていい。もう会わないとか、花火は行かれないとか、そういう断りのメッセージが来ていなければ、それでいい。あとは日が暮れるのを待つばかり。

夏の日とはいえ、6月下旬の夏至を境に日没は少しずつ早くなっていく。運動公園に差し込む西日を背に、木々をそよがせる風に吹かれていた宗一郎は、砂利を踏みしめる音を耳にして顔を上げた。すると、白くてひらりとした影が視界をよぎり、思わずまばたきを繰り返した。

妖精かと思った――そんな夢見がちな言葉が脳裏を通り過ぎたからだ。

それが恥ずかしかったせいもあって、宗一郎はつい立ち上がった。少し離れた場所に、あの白のサマードレスのが佇んでいた。髪をきちんとまとめ、おそらく薄化粧もしていて、小さなポシェットを下げている。

「遅くなって、ごめん」
「え、いや、時間通りだよ、こっちこそごめん、こんなところに」
「央二郎くんは大丈夫?」
「それは、うん、大丈夫だと思う。オレが家出るとき、寝てたし」

立ち上がってしまった宗一郎の傍らを通り過ぎて、はベンチに腰を下ろす。

……あのね、ちょっと聞いてもらっていいかな」
「え?」

自分からちゃんと話そうと思っていた宗一郎だったが、の方が話し出してしまった。仕方なく少し距離を置いて宗一郎も腰を下ろす。風が吹くと、甘い柑橘のような香りが漂ってくる。

「夏休みの間はほとんど私がひとりでグリの散歩することになるから、よくここに来てた。神が国体の練習で忙しくなってる間も、ここに来てた。そしたら、なぜか、いつも央二郎くんがいるの」

宗一郎は央二郎の名を聞いた瞬間、ザッと血の気が引いて体が冷たくなった。は神妙な表情をしているし、ふたりで選んだ白のドレスに薄化粧までしているけれど、あまり抑揚のない声で央二郎のことを話している。何を、言われるんだろう――

「央二郎くん、なんの目的で来てるのか、全然わかんなかった。あのダルそうな感じで猫背で、よう! とか言って、だけどグリは神と区別ついてないみたいだったし、無視することもできなくて、今日のこともあったから、機嫌を損ねてもっと妨害されないようにしないと、とか、思って、相手してた」

宗一郎はもう相槌も打てない。思ってた――過去形か。

「それね、ほとんど毎日だったの。ここに来ると央二郎くんいるのね。で、なんか雑談して、それで帰る。そんなことが何度もあって。この前なんか、グリが親戚の子と遊んで興奮して脱走しちゃって、行方不明になっちゃって、その時は見つかるまで一緒に探してくれたり、したの。私、グリが死んだらどうしようって怖くて半泣きだったんだけど、大丈夫だからってずっと励ましてくれて、だけどお礼なんかいらないってそのまま帰っちゃって」

自分のことはさておき、央二郎が意地悪なだけの人でないことをよく知る弟は深く頷いた。が犬いないと慌てて駆け込んできたら、そりゃあ助けるだろうな。腕引っ張って、心当たりを連れ回して、大丈夫だからしっかりしろって声をかけながら。兄はそういう人だ。

兄がどれだけいいやつなのかってことは、世界中の誰よりもよく知っている。

だから、が自分より兄がいいと思っても、それは仕方ないのかもしれない。

「央二郎くん、何考えてるのか全然わかんなくて、すぐ抱きついてきたり、チューしていい? とか言い出すし」

央二郎め……と思うが、後の祭りだ。自分はその頃体育館で合同練習に夢中になっていた。

自分はあの日部室でを後ろから抱き締めたのが精一杯だったのに。もう少し一緒にいたいと言葉にできなくて、つい衝動的に手を伸ばして抱き寄せ、いつも頭の中でだけ呼んでいたように、「」と言ってしまった、それだけでも大変なことだったのに。

央二郎の言う、「時間がない」って、こういうことなんだろうな。

宗一郎は頭がぼんやりしてきて、その中で思い出す。海南OBの先輩たちはよく体育館に顔を出すが、彼らは学生の時でも一様に暇がないという。彼女はいないか、いても時間なくて別れる羽目になったとか、そんな話はよく耳にする。けれど、ほんの数ヶ月間を置くと、突然結婚したとか言い出すのだ。

バスケット以外のことに使える時間が少ない、ゆっくりやっている暇がない。自分もそうなっていくのかもしれないな、と宗一郎は考える。は兄を選び、自分はバスケットを選び、その中であのTシャツを欲しがった子たちのような女の子と適度に付き合い、その中でも一番マシなのとさっさと結婚でもするんだろうか。のんびり付き合っている暇が、ないから。

ふと視線を巡らせれば、いつの間にか空は群青からオレンジのグラデーションになっていて、昼と夜が入れ替わりつつあった。グラデーションの境目のあたりに金色の細い月が浮かんでいる。

月はまるで央二郎のようだ。明るい日差しの中、とふたりで笑って過ごしていた宗一郎が太陽だったのだとしたら、夜の闇の中に紛れて現れての近くを周っていた。夜にしか現れないはずの月はたまにこっそりと昼でも姿を表し、だけど圧倒的に近い距離で、いつしかの手は彼に届く。

自分がこの先一生シュートをできなくなってもいいから、その分をあげる、と言ってくれたと一緒にいたかった。犬の散歩でもふたりで出かけても、いつも楽しかった。そういうと一緒にいたかった。それでも彼女が央二郎がいいというなら、も央二郎も大事で手離したくないとかいう欲張りな自分が弾き出されるのは当たり前なのかもしれない。

「それでね、ええとその、雨にやられて部室で、話したことあったでしょ。あの後もね、ここで喋ってて、弟からは逃げ出しただろうけど、オレからは逃げないじゃん、オレにしなよって言われたりとか」

言うだろうね、央二郎なら。神はまた身近な仲間たちを思い出す。優秀な選手ほど、勝ちを掴みに行くことに遠慮がないタイプばかりだ。隙を見せた方が負ける、勝った方はその「隙」を見逃さなかっただけ。怪我をするまでの央二郎は、そういう優秀な選手だった。

それにしても話が長いな、どうせならひと思いに振ってくれればなあ、と宗一郎が考えていると、俯いていたがふいに背筋を伸ばして顔を上げた。群青の空の下、ひぐらしの鳴き声に包まれて彼女は息を吸い込む。

「そういうことが、ありました!」
……んっ?」
「黙ってて、ごめんなさい!」
「はい?」

背筋を真っすぐ伸ばしていたが勢い良く頭を下げるので、宗一郎は素っ頓狂な声を上げた。

「え、あの……どういう……
「神は練習で忙しいし、なんか央二郎くん甘ったれてる感じもしたし、暇なんだろうし、これは私が何とかして今日妨害されないようにしなきゃと思って、だけどいちいち何があったかなんてチクるみたいに報告して、それで神と気まずくなったりしたら嫌だったし、神が央二郎くんのことすごく心配してたから、私も力になってあげなきゃいけないような気がして……

そういう日々の中で運動公園でふたりで会っていたことは、一度も宗一郎には言わないままになっていた。は言い終わるとまた肩を落として膝の上で手を組んだ。すっかり日が落ちて、ドレスの白がくっきりと際立つ。

……そういうの、やっぱり、嫌だよね。知らないところで、お兄さんと隠れて、会ってたみたいで」

考えていたのとは違う方向に話が逸れたので、宗一郎は一気に目が覚めた。これは、違うのか。

……央二郎のこと、好きなの?」
「えっ!? まさか! どうして!」

違うんだな。宗一郎はベンチを滑り降りての正面に片膝をついた。なにぶん身長があるのでそれでもを見上げるほどではなかったけれど、驚いている彼女の顔を真正面から見つめる。そして、膝に置いてあった手を取って包み込む。

、好きです」
「えっ!?」
「オレ確かに時間ないし、これからもっと時間なくなるけど、でも一緒にいたい」

国体はあるわ冬の選抜はあるわ、それが終われば主将になっちゃうわ……これからますます神は多忙を極める。それはそれだ。だけど君が好きです! 一瞬ぽかんとしていただったが、我に返ると包まれていた手を引き抜いて包み返し、ぎゅっと力を入れた。

「私も好き。央二郎くんオレでもいいでしょほぼ同じなんだからって言うんだけど、双子ってそういうものかもしれないけど、でも、央二郎くんには何も感じないんだもん。好きとかドキドキするとかそういうの、神にしか……
「央二郎も神だよ」
「あっ、そ、そうなんだけど! ええと、神の、弟の方!」

宗一郎は立ち上がってベンチに跨ると、と手を繋いで向き合う。

「兄貴は名前で呼ぶのに」
……そ、宗一郎の方、です」
、花火、一緒に行ってくれる?」

が忙しなく頷くので、宗一郎は手を引いて抱き寄せ、両腕の中にくるみ込む。

「ドレス、やっぱりそれすごく似合ってる、かわいい」
「そ、そんなこと……
「央二郎が早く手を出せみたいなこと言うと反論してたけど、ごめん、今反論できない」

ただでさえラインの出てしまいやすい白、サマードレス、下着もきちんと対応させてきたせいで、宗一郎の腕にはの体の線がよく伝わる。甘い柑橘の香りが漂ってきては理性をガクガクと揺さぶる。途端にの体がガチッと固まるけれど、拒否はしない。

もまた、あの日逃げ出してしまったことを悔いていたからだ。

「央二郎くんだったら何言ってんのこの人、って思うところだけど、宗一郎だから、平気」
「ほんと? もう逃げない?」
「ドキドキしすぎて頭爆発するかもしれないけど平気」

が上を向くと、宗一郎の顔が目の前に迫っていた。緊張で爆発しそうな頭のまま、は目を閉じ、宗一郎は吸い寄せられるようにして唇を落とした。

……花火、見に行こうか」
「手、繋いでいきたい」

宗一郎はの手を引いて立ち上がると、しっかりと繋いで引き寄せ、すっかり日の落ちたバスケット広場を出て行く。今日はふたりとも自転車ではないので、バス停まで歩いて、駅まで出て、そこから花火大会の会場へ向かう。花火の打ち上げ開始にはまだ余裕がある。

地元周辺で一番大きな花火大会、もしかしたら知った顔が、海南の生徒がいるかもしれない。はまだ少しそれに恐怖心があったけれど、宗一郎がいれば心配いらないし、目立つ存在の宗一郎と付き合っていることが知られたら怖い、ということは以前よりももっと正直に言える気がした。

「だから、守ってね」
「もちろん。困ったことがあったらすぐ言ってよ」
「あ! もうひとつ、嘘ついてた!」
「嘘?」

ぴったりくっついてバスに揺られていたふたりだったが、が思い出して声を上げた。

「バスケ部Tシャツ! お父さんが着てるとか、嘘だから!」

あんなレアなものお父さんにあげるわけないとか、自分でも着てない、ちゃんと洗濯してしまってあるとまくし立てるに宗一郎はけたけたと笑った。実は女の子が着るようなサイズのTシャツはマジで余っているので、そんなに大袈裟なことではないんだけど。

あの2000円くれたのお父さんだけどね! とが言うので、宗一郎はまた盛大に吹き出した。

翌朝の地方紙の発表では10万人を動員したとされた花火大会、と宗一郎はその辺にいくらでもいるカップルと同じように手を繋いでイチャつきながら会場をうろつき、露天で買ったものをシェアして突っつき、くっついて花火を見上げ、そしてまた手を繋いで会場をあとにした。

やっぱりそれを海南の生徒何人もに目撃されたし、同学年で面識がある者の中には遠慮なく声をかけてきたのもいたけれど、基本的には全て宗一郎が対応した。なんとなれば、殆どの人々の言うことは要約すると「なぜ?」だったからだ。そんなの好きだからに決まってるじゃないか、失礼な。

宗一郎はにこやかな笑顔を振りまきながら、堂々と「さっき告白して付き合ってもらうことになった」と言い放った。一応間違いではない。にわかに信じがたいという表情ばかりが返ってきたけれど、宗一郎本人が言うのだから、反論の余地はない。

こりゃあ新学期は荒れるな……などとヘラヘラ笑い合いながらを送って帰った宗一郎は、久々にグリとも再会、ついでにドレスアップした娘が緊張した顔で出かけていったのが気になっていた父母も出てきて、付き合った初日にご家族とご対面になってしまった。

しかしそこは現海南プリンスの宗一郎である。その上娘を通わせている以上は海南のバスケット部がどういうものなのかを知るの両親は仰天、しかもグリが最高にかわいいと褒めてくるし、既に何度も言っていて慣れたか、自分がさんにお願いして付き合ってもらうことになりました、と頭を下げる始末。テンションが上ったの両親は、だったら君も疲れるのはマズいだろう、家まで送るよと言い出した。

「グリ久しぶりだからめっちゃ嬉しい……
「この様子じゃうちに来ても大丈夫そうだね」
「マジで。来たい。とグリに挟まれたい」

の両親が支度をしている間、ふたりは玄関から死角になっている場所で寄り添っていた。

「でもまたドッグランとか、そういうのも行こうね」
「もちろん。時間がある時は色んな所行こう」
「えへへ、嬉しいなー。央二郎くんが現れる前に戻ったみたい」
……、ふたりのときは、央の話、しないで」

が宗一郎の低い声に顔を上げると、そのまま口を塞がれてしまった。

「うん、そうだね……
「オレのことだけ見てて……
「うん、でも……
「なに?」
「宗一郎の方がそれ、出来ないんじゃない?」

図星を付かれて項垂れる宗一郎、笑いながらその体をぎゅっと抱き締める、ふたりの頭上には夏の雲が夜空を渡り、赤く色づく月がぼうっと浮かんでいる。いつしかの迷い込んだメルヘンの世界は、めでたしめでたしで終わろうとしていた。

えっ? 央二郎どうなったかって? じゃあそっちを少し覗いてみよう。ひとまず、幸せそうにキスを交わしているふたりには、いつまでも仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし、ということで。