ガールズ、レディ!

4

今日は寝かさねえぜ、などと豪語していた姉ふたりだったが、いつものようにを突き回して楽しむつもりが自分たちのことばかり話し、挙句に独立を応援すると言われてしまって、それはもう気持ちよーく酔っ払ってしまった。結果、1時くらいにふたり揃ってダウン。

はふたりを和室に敷かれた布団まで引きずっていき、しっかりと掛け布団にくるみ込んで寝かせると、ゴロゴロ転がる酒瓶を全部片付け、持ち込みの痕跡が残らないようにしっかりと後始末をした。

そしてメイド服を脱ぐと浴衣に着替え、千代子と八重子がぐっすり眠っていることを確かめると、音を立てないようにして露天風呂に出た。かけ流しの風呂には絶えずチョロチョロと温泉が流れ込んでいる。そのへりに腰掛け、は足先だけを湯に浸す。

見上げた夜空にはちらちらと揺れる星がきらめき、は深呼吸すると携帯で電話をかけた。

「あ、起きてた?」
「どうしたこんな時間に。何かあったのか」

電話の相手は藤真だ。起きていたらしいが、夜中に旅先から入電なので焦っている。

「ご、ごめん、そういうわけじゃなくて、今ふたりが潰れたところで」
……すまん」
「えっ、なんで健司くんが謝るの、大丈夫だよ。いつものことだし、楽しかったよ、今日」

藤真は藤真でと姉が旅行に行っていて彼氏である自分が置いていかれたことに不貞腐れていて、珍しく夜更かしをしていた。そこに電話などかかってきたものだから、何かトラブルでも発生したのかと肝を冷やした。

「それならいいけど、どうしたんだこんな時間に」
「えと、その、声が聞きたくなって」

ぼそぼそと言うの声に藤真はウッと詰まる。手が届かないところにいるというのに、こんな静かな夜中だというのに、そんなかわいいことそんなかわいい声で言うんじゃない!

「ごめんね、寝てた?」
……いや、起きてた」
「かけてから言うなよって話だけど……珍しいね」
「彼女が自分を差し置いて姉と旅行行ってるから不貞腐れてた」
「わ、ちょ、それは!」

電話の向こうで藤真が甘ったれた声をだすので、も湯の中でつま先をバタバタと動かした。

「だって! それはほら、健司くんが忙しいのがいけないんでしょ!」
「そ、それはそうだけど!」
「まさか卒業式から家を出るまでの間が1週間しかないなんて」
「それはオレも知らなかったんだよ」
「私も受験だったけどさ……別に健司くんと旅行行きたくなかったわけじゃないよ」

それはもちろんそうだ。ただ今回の場合、の受験が終わったら3人だけでしっぽり温泉旅行、というのは半年以上前から計画されていたことであり、その点姉ふたりに弟への遠慮はないし、が受験に専念し始めた頃は藤真もまだ忙しく、ずっと時間はなかったのだ。

、オレもと旅行行きたい」
……あのね健司くん、聞いてくれる?」
「何?」

はまたお湯をシャバシャバとかき回しながら、背筋を伸ばす。オホン、聞いて下さい。

「あのね、私ね、箱根は健司くんと一緒に来たいって思ってたの。今回はたまたま千代子姉さんと八重子姉さんが箱根を選んじゃったけど、それよりも前から私は健司くんと箱根に旅行行きたいって思ってた。だからその、ふたりとの温泉旅行が先になっちゃったけど、いつか箱根、一緒に行ってくれませんか」

ベッドにひっくり返っていた藤真も起き上がって背筋を伸ばす。もちろんですとも。

「そんなの当たり前だろ。てかどうして箱根だったんだ」
「富士屋ホテル」
「えっ?」
「富士屋ホテル、行きたいの」

出費がかさむついでに藤真は卒業入学祝いでノートパソコンを買ってもらった。そのセットアップも途中で、机の上に置きっぱなしだった。手を伸ばして検索してみる。富士屋ホテル、と。……はい、了解ー。

「あのね、富士屋ホテルって言ってね、箱根の有名なホテルでね、明治初期に創業されたホテルでいわゆるクラシックホテルってやつなんだけど、途中外国人専用だったこともあって、チャップリンとかヘレン・ケラーなんかも泊まったりしたんだけど、そういう当時の面影を今に残しててね、レトロモダンな和洋折衷って感じでね、本館西洋館花御殿フォレスト館旧御用邸菊華荘ってあってね、フォレスト館以外はみんな有形文化財にもなっててね、私その花御殿のばらかすずらんか桜か菊にいつか泊まりたいってずーっと憧れてて、いつかそこにスリーピースのスーツ着た健司くんと行かれたらいいなあって思うようになってて」

の必殺技が耳元で炸裂したので、藤真は黙って富士屋ホテルの公式サイトを検める。なるほどが好きそうな建物だ。歴史も長く古く、箱根の観光業を象徴するようなホテル。スリーピースがどうとか聞こえたけどそれはまあ今のところスルーしておいてやろう。てか、ここ結婚式もできるじゃん。

「け、健司くん……?」
「オレはそういう憧れとかないし、とふたりで行かれるんだったらどこでもいいよ」
「ほ、ほんと!?」

一応嘘ではない。何もふたりで行く旅行は一度きりでなきゃならんという決まりがあるわけでなし、憧れの富士屋ホテルもそのうちのひとつだと思えば何の問題もない。しかしそれはまだ先の話。

「でも旅行もいいけどさ、オレ来週には向こうに行くからさ」
「そ、そうだよね、練習、始まるもんね」
「まずはそっちに……来てほしいんだけど」
「わわわ、わかってます、はい」
「ほんとにわかってる?」

それがどういう意味なのか。拗ねたような藤真の声に、はごくりと喉を鳴らす。

「わかって、ます……
「強制はしたくないけど、来てほしい」

ふたりが付き合い始めたのは3年生になって間もない頃で、もうしばらくすると1年が経過する。その間お互い受験だの大会だので忙しかったとはいえ、ろくにデートも出来ず、もちろん何をすると言ってもキスくらいが関の山だったし、それでも藤真は文句ひとつ言わずに我慢してきた。そのくらいはでもわかる。

そして今夜、姉ふたりの話がきっかけとなって、またの中に新たな決意が芽生えた。

「けっ、健司くん!」
「うわ、なんだよ!」

の声がひっくり返ったので、藤真はベッドから転がり落ちた。何だよその声。

「メイドと魔女とシスターとアリスと赤ずきんちゃんだったらどれが好き!?」
「何の話!?」

夜中だということも忘れて藤真は大声を出した。何だいきなり!

「え、ええと、いわゆるコスプレというかなんというか」
「ちょっと待ってそれオレが泊まりに来てほしいって言ってることに対するアレですか」
「そうです」
「初回からコスプレですか」
「いやその好みの調査というかなんというか」

さきほどまで着ていたメイド服を買ったショップには他にも可愛らしいコスプレ服がたくさんあって、今が列挙したのはその中でも自分が気に入ってしまったラインナップだ。魔女なんかハロウィン需要のせいか可愛いものがたくさんあって目移りしてしまった。

しかしそういうちょっとセクシーなコスプレ衣装なんての性格上、外では絶対に着られない。しかしもし藤真がこういうの好きだったら、彼が嫌でなかったら家の中では着られるかもしれない! と思ってしまったことは事実だ。一石二鳥。

「いや別にがそーいうの着たいって言うなら別にいいけど……
「えっ、いやその、どういうのが好きなのかなって思っただけだから別に深い意味は」
「ないの?」
「え!?」

突き放されると開き直れないのが豆腐メンタルの悲しい性である。姉ふたりの話はまたに勇気を授けてくれたが、効果はすぐ切れる。はまたしどろもどろし始めた。

「オレ、普段のでも充分だよ」
「そ、そうだよね、ごめん、変なこと聞いて……
「でも慣れてきたらそういうのも楽しいと思う」
「ふわ!?」
「メイドとかアリスはわかるけど赤ずきんちゃんは予想外だったな。ちょっと見てみたい」
「けけけ健司くん……
「あとはそうだな〜浴衣もいいよな〜」

真面目な受け答えをされてしまうとそれはそれでパニック起こすというめんどくさいは顔が熱くなってきてしまい、慌てて露天風呂の中から足を引き抜いた。慣れてきたらって慣れてきたらってなにそれなにそれ

があわあわしているのが手に取るようにわかる藤真は少し楽しくなってきてしまい、口元を歪めながらゴロリとベッドに横たわる。ほんとにオレの嫁のかわいさときたら。だけどこれだけ待たせておいて、さらにコスプレ何がいい? とか脳天気に聞いてきたお仕置きをせねば。

「でも、言っていい?」
「えっ、なにを?」
「オレ、何も着てない方が好き」

は声にならない悲鳴を上げて露天風呂の傍らに転がった。ビタン、ゴンと派手な音がしたので藤真も何が起こっているのかはだいたい想像がつく。

「着たままとかそういうのは、もっと後でね」
「いやあの、健司くん……
「ていうかそうだ、制服捨てるなよ。何年かしたら着てもらうから」
「ご、ごめんなさ」
「んー、だけどさっきのラインナップってのイメージ通りって感じで面白くないかもな」
「健司くん私が悪かった勘弁して」

だいぶパニックになっているようなので、藤真はイヒヒと笑ってお仕置きを止めた。

「でもオレ、嘘は言ってないよ。本当に待ってるから」
……はい」
、好きだよ」
「わた、私も好き」
「それじゃ暖かくしておやすみ」
「うん、おやすみなさい」

通話を終えたは深呼吸をして箱根の清涼な空気を目一杯吸い込む。勇気をもらったと思ってまた何も考えずに突っ走ってしまった。それは反省。だけど後悔はしてない。ちょっと前まで重度のコミュ障だったものがいきなり人たらしになれるわけないじゃないか。失敗しながらでいい。

それに、藤真に返り討ちにされたとはいえ、まだまだの中の勇気が再び息を吹き返す。どころか、ますます奮い立つ。富士屋ホテルもコスプレもいつかきっとちゃんと現実のものにしたい。千代子姉さんと八重子姉さんみたいに、また新しい一歩を踏み出すんだ。

は夜気が入らないよう窓をきっちり閉めると、ベッドに飛び込んだ。

翌日、早めに落ちてぐっすり眠った千代子と八重子は早くから起き出して露天風呂に入り、そこそこ飲んでいたはずだが二日酔いの気配もなく、ダイニングでの朝食ももりもり食べ、やや眠そうなを連れて意気揚々と宿を後にした。今日は少し観光をしたらそのまま帰る予定である。

「手作りアクセサリー?」
「そう! どうよ、3人でおそろいのシルバーリング!」
「カップルがペアリング作ってる横でどうよ! 最高にクールじゃね?」

とある工房に連れてこられたはしかし、昨夜の決意もまだ胸にあるのでわくわくしてきた。千代子と八重子とお揃いの指輪だなんて、めちゃくちゃ嬉しい! ふたりはシルバーだから安物だけど、なんて言ってるけど、そういう問題じゃない。

「オプション付けると時間かかるからプレーンなのでいいよな」
「文字とか入れる? それはなんかちょっと寒くね?」

ふたりはサンプルを見つつ盛り上がっている。エンゲージリングではないのだし、裏側に文字を入れても感慨はない。しかしただプレーンなシルバーリングを付けていても味気ない。そういうわけで、結局リングの表面に小さな3本の刻みを入れることにして、それを3人の証とした。

黙々と手を動かす凝り性の八重子と真面目な、それを長く黙っているとウズウズしてくる千代子が声でちょっかいを出すという作業だったが、それぞれ大きな失敗もなく作ることが出来た。もう少し待てば持ち帰ることが出来る。あとは駅前でお土産を買って帰るだけ。

「おお、意外といいんじゃね? 刻みを内側にすると味わい深いじゃん」
「重ね付けするのにもちょうどいいじゃん」
「だよねだよね!」

仕上がりに満足げな姉の間に割って入ったは、千代子の言葉に乗っかって、ぐいっと手を突き出した。ふたりとも見て見て! という勢いだ。の右手の薬指には、指輪がふたつ。

「おお、もぴったり……ってこっちどうした?」
「ん? あ、ほんとだ、かわいいクラウンリングじゃん……そんなん付けてたっけ」
「こ、こここ、これは、健司くんにもらいました!!!」

一瞬の沈黙、そして野太い悲鳴。

「いつの間に! いつもらったんだよ! てかあいつそんな金あったか!?」
「い、引退した後に教習所行きながらバイトしてたって、それで、その分前借りしてクリスマスに!」
「なんだと!? そんな話今まで……
「ごめん今まで恥ずかしくてポーチの中から出せなくてそれで……!」

ふたりに手をガッチリ掴まれたままはあわあわと説明する。時間もなければなかなか距離が縮まらない上にすぐパニック起こす彼女だが、まあ彼氏の方はそういう彼女が好きなので、精一杯の気持ちとしてこの指輪を贈った。またクラウンリングとは彼女の好みをよく把握できているではないか。

「なんだよ健司め、やりおるな」
「そそそそれで、これから毎年クリスマスには指輪だからねって」
「っかーあんの野郎、甘えこと言ってんな!!!」
「それでその指輪が5コ溜まったら、もっと、ちゃ、ちゃんとしたのと、交換ね、って!」
「何ィ――!?」

少々子供じみてはいるけれど、かわいらしい「おとなになったらけっこんしようね」ではないか。姉ふたりはすっかり仲良しだと思っていたがこの話をしまい込んでいたことに衝撃を受けつつ、口元がムズムズしている。だがは昨夜の勇気がなくならないうちに、と続ける。

「だけどそういう気持ちで健司くんがくれたものを恥ずかしいって隠してて、そういうのやっぱりダメだって昨日の夜思って、そしたら今日ふたりとお揃いの指輪だって言うから、これはもうこうやって一緒につけるしかないって思って! 私もう隠したりしないで、大好きな人たちといつも一緒なんだって、これはその証拠なんだから堂々としていようって――あひゃあ!?」

一生懸命喋っていたは、前に千代子後ろに八重子で挟まれ、またおっぱいの圧力で押し潰されそうになって喘いだ。親愛のしるしなのだとしても、豪腕なので圧迫感がすごい。

、最初にひと目見たときからあんたはいい子だってわかってた」
「健司なんかどうせ簡単に足開くクソビッチ何人も手懐けてんだろうと思ってたのに、嬉しかったよ」
「私らこれでもあの甘ったれのことは心配してるんだよ」
「だけどそのパートナーがだったていうことが私らは本当に嬉しい」

おっぱいサンドの中からなんとか首を伸ばすと、は大きく息を吸い込む。

「わた、私も、彼氏がいるって言うだけでも嬉しいのに、まさかお姉ちゃんがふたりも出来たみたいになるなんて思ってなくて、本当に嬉しくて楽しくて、だからその、本当に指輪が5コ溜まって、もっといい指輪に交換できたらって、最近はずっと思ってて、そうなれるように、頑張ろうって」

千代子と八重子はそれぞれ自作のお揃いリングが嵌まる指でのリングを撫でる。プレーンな3本の刻みが入るリングの上に、レーシィなクラウンリングが乗っている。

「私らもその日を楽しみに待ってるよ」
「来るべきその日のためにも、うん、頑張ろうな」
「ふふん、女の底力舐めんなって話だ!」
「おうよ、いつでもかかって来いってんだよな!」
「えへへ、かかって来ーい!」
「うおっ、よく言ったな! その意気だ!」

3人はケタケタ笑いながら箱根の街をゆく。それぞれの新しい未来を、世界を前に見据えて、その白い手を取り合って、固いヒールをカンカン鳴らしながら、甲高い声で笑いながらゆくのだ。いつか本当の家族になるのかもしれない、それはまだ遠いぼやけた夢だけれど、彼女たちは次の一歩を踏み出す。

その行く末には困難もあろう、クソ野郎も潜んでいよう。しかし困難などそのハイヒールで粉々に踏み潰してしまえ。クソ野郎などその指輪の嵌った手でぶん殴ってやれ。そうやって歩いていればいつかどこかにたどり着くさ。

女の子たち、さあ、準備はいいか?

その日の夜、神奈川県某所にある藤真家。

千代子と八重子は早めに帰宅するはずが、と横須賀に遊びに行ってしまい、ずいぶんと遅くなってから帰ってきた。そしていつものようにリビングで荷を解き、土産を配り終えるとにもらったベビードールでウロウロしている。

一旦も藤真家に立ち寄るはずが、時間が遅くなったからと直接自宅に帰ってしまったので、その彼氏である健司くんはまた不貞腐れている。てか、なんでこんなもん贈ったんだよ。

さらに姉ふたりは自慢げにお揃いなのだと言って指輪をチラチラと見せびらかしてくる。

「そーいやお前も指輪プレゼントしたらしいじゃねーの」
「な、ちょ、なんでそれを」
「なんでってそんなのに聞いたに決まってんだろバカかお前」
「毎年指輪あげるから5コ溜まったら結婚しようね! ってかー!」
「お前のクラウンリングをお姉様とお揃いの指輪が下から支えてやってんだぞ、ありがてえよなあオイ」

死にたい。藤真は真っ青だ。

しかし彼氏である弟差し置いてその彼女と旅行に行ってきたのだから、これで済むはずがない。

「しかし真面目な話、健司、お前はよく耐えてると思うぞ」
「付き合ってもうあと少しで1年になるな。けど進捗は芳しくない」
……だから何だよ」

リビングのソファで両側から姉に挟まれた藤真はがっくりと肩を落とす。

………………の体は、マジいいぞ」
「は?」
「多少垢抜けない感は拭えんけども、それがいい! 手入れのされてない野暮ったさがまたエロい!」
「あのいかにも『油断してます』っていうところが垣間見える感じ、たまんねえぞ」

何を言い出すのかこいつらは……と白い目の藤真だが、姉の方はそんなもの見ていない。

「そうかそうか、お前はまたあの体を知らねえんだな」
「いいとこ服の上からくすぐる程度で、拝んだこともねえと来た」
「いやあ、不憫で泣けてくるわな。……私らはおっぱい揉みまくったけど!」
「ケツも触ったけど! てかマッパでイチャイチャしまくったけど!」
「おっぱいはすべすべだったぞ、うん」
「ケツは柔らかめだけど、弾力はある、うん」
「悪ィな! お先に!!!」

ギャハハハとひときわ大きな声で笑うその姉を残して藤真は自室に逃げ帰った。つらい。あまりにもつらい。

大事に大事にしてきた彼女の素肌、それは正真正銘最初の彼氏である自分だけのものだと思っていたのに、事もあろうにそれを実の姉に奪われ先を越されてしまうなんて! おまけに指輪の件は漏れてるしとっくに自宅に帰り着いてるはずのからは何の連絡もないし、土産はねーのかと言ってみたら飲みかけの酒の瓶を渡された。つらい。つらすぎる。

その上まだ見ぬの裸体についてを詳細に語られてしまい、目が回る。

くそっ、あと少し、あと少しだ! 家さえ出てしまえばこっちのもの。だってもう逃げたりはしないはずだ。コスプレとかまたアホなこと言い出してたけど、それだけ自然にふたりの関係のことを考えられるようになってる証拠だ。、覚悟しとけよ! オレはこう見えて草食とは程遠いからな! 悔しいがそこはあいつらと同類だ!

藤真は頭をかきむしると、勢いよくベッドに転がって携帯を取り出し、電話をかける。

「もしもし!? オレだ! 花形、ちょっと聞いてくれ!!!」
「断る」

END