ご主人様、願いをどうぞ/海南編
神の場合
初めまして新しいご主人様、ランプの魔人、です。願いを――
- 神
おお、久しぶりだな
……あああああああ!!! 貴様、あの時の……!
- 神
ちゃんといい子にランプの魔人やってるのか、感心感心
いい子って貴っ様ァァァお前のおかげでこんな狭い所に1000年も
- 神
自業自得だろ、さんざん悪さしておいて
善と悪が表裏一体のそういう存在なの!!! それを一神教的尺度でぶった斬りやがって! 私の悪さなんて可愛いもんだというのに
- 神
まあなー、禁固5000年はやりすぎだったかなと今は反省している
しかも何今の名前。神、神て! 神でジンて嫌味か!
- 神
しょーがないじゃん、こっちもちょっと普通の人間じゃなくなっちゃったんだし、生まれてくる家は選べないよ
えっ、じゃあまだ魔法使えるの!? 呪い、解いてよ!
- 神
魔法は使えないって。なんか根本的に死ねないだけみたいで
……あっそう。まーそれも自業自得かもねー、人のことランプなんぞに5000年閉じ込める魔法なんか使うから呪詛返しもヒドいんだろーねー
- 神
呪詛返し……あっ、そうか! 願い事で人間になればいいのか!
はあ!?
- 神
いやー、転生とかもういいわ。全部忘れてただの人間になりたい
ずるいずるい!! ひとりだけそんな……!
- 神
いやー、今の人生けっこう楽しいし、黒歴史は忘れたいんだよね
そりゃあそうでしょうね! 魔法陣とか書いてたし!!
- 神
うわー、やめてよ恥ずかしい。呪文とか唱えてたなー
お前、私になんて言ったか覚えてるか
- 神
なんだっけ?
「己の力に酔うた悪魔め、全知全能たる神の御名において、その金色のランプの中で5000年、己を恥じよ!」
- 神
うーわ、恥ずかしい
完全に自分のことじゃん
- 神
だからそーいう記憶、早く忘れたいんだよね
くっそおおお
- 神
、最初の願いだ。オレをただの人間にしてくれ!
へいへい
- 神
……あれっ、記憶なくなってないよ
願い事はちゃんと正確に言ってもらわないとねえ
- 神
なんだよもう! 記憶消去だけでひとつ使わせる気かよ!
知るか! 本当は願い事ひとつだって叶えたくないよ!
- 神
まだそんなこと言ってんのかよ、お前根に持つタイプだったんだな
……5000年だぞ5000年
- 神
別に死なないんだからいいだろ。既に3000年くらい生きてたんだし
それが嫌で人間になりたいって今自分で言ったよね!? だったらその気持わかるでしょ!? それを自分だけ……!
- 神
あれ? 何、お前も人間になりたいの?
それ以前にここから出たい
- 神
だけど魔人のまんま出たらまた悪さするんだろ
あのね、閉じ込められたのは1000年前だけど、生まれたのは3000年前なの。その頃は私多神教の神様だったわけ。だからいいこともするし悪いこともしてたの。それを悪魔にしたのはあんたたちでしょ
- 神
いやまあ、そうだけど、じゃあ悪さしないのか?
私の話聞いてた? ここ日本だし私もう誰にも神様と思われてないし、いいことも悪いこともしようがないんだけど。ただ魔法が使えるだけで、なーんにもやることないんだよ
- 神
お前もオレの話聞けよ。悪さしないんなら、人間になってランプから出ればいいだろ
それが出来たらとっくにやってるよ! 自分でご主人様に願ってもらわなきゃ解放されない呪いかけたくせに……!
- 神
だから、オレが願えばいいんだろ
……ん?
- 神
1000年も経ってるんだし、昔のことは水に流そうよ。オレもお前も、もうあの頃のことは忘れてただの人間になればいいじゃないか
え? どういうこと?
- 神
、ふたつめの願いだ。まずは君に自由を
え? え?
- 神
……、悪かったと思ってるよ。長いこと苦しませてごめん。もう自由にしてあげるから、その、一緒にやりなおさないか
やりなおすって……
- 神
願い事は正確に、だったな。――っと、記憶が消える前に
!? ちょ、な、なんでそんな、キスなんか
- 神
いや、なんとなく。1000年前のこと、もう忘れちゃうからね
え、ほ、ほんとに……? 私人間になるの?
- 神
そう。、3つ目の願いだ。僕たちふたりの記憶を消して完全な人間にしてくれ。それに、出来たら――近くにいて
……はい、ご主人様、お安い、ご用です
- 神
、またな
………………
- 神
…………あれっ、ええと、誰だっけ
はっ? 誰って、っていう――
- 神
ああそうだったっけ? 制服、海南のだよな
あ、うん、2-Bだけど
- 神
そっか。オレ2-Gだから知らなかったんだな。ところで、それ何?
これ? ……なんだろうこのランプ
- 神
なんだっけ、アラジンと魔法のランプだっけ、あれみたいだね
でもなんでこんなの持ってるんだろう私
- 神
覚えてないの? ま、いいんじゃない、アンティークできれいだし
うん、そうだね、きれい
- 神
……もきれいだね
ん? ごめん、聞こえなかった
- 神
ううん、なんでもない。ところでさ、って――