ハイホー!
あら、こんなところに可愛いお家があるわ。まあ、暖かそうなベッドも。ずっと歩き通しでへとへと、休ませてもらいましょう
-
……
- 牧
……誰だこの子
- 花形
おい藤真、誰だよ
- 藤真
なんでオレのせいになってんだ
- 木暮
死んでるわけじゃなそうだな
- 清田
かわいいなー起こさないの?
- 三井
何ボーッとしてんだ起こせばいいだろ
- 牧
お前起こしていいよ
- 三井
いやべつにいいよ、そんなの
- 神
何やってんのみんなして。お嬢さん起きて、どこの子?
ふあーよく寝たあ
- 神
おはようお姫様、どこから来たの?
きゃー! だだだだ誰!?
- 三井
いやお前こそ誰だ
- 木暮
怖がらせたらダメだって
- 花形
オレたちはここで暮らしてる者だけど、君は?
勝手に入り込んでごめんなさい、お城を追い出されたんです
- 牧
お城? 山一つ向こうのか? こんなところまでよくひとりで来られたな
- 藤真
……そういや最近城主が再婚したって聞いたな。それか
お察しの通り継母に疎まれていたようで、行くあてもなく
- 清田
じゃあここに住めばいいじゃん。よろしく!
- 三井
ちょ、おいおい、そんな簡単に
- 神
追い出されたって、そんな着の身着のままで?
それがその、殺されかけまして
- 藤真
振りきって逃げてきたのか?
いえ、私を殺せと命じられた兵士が見逃してくれました
- 牧
じゃあ少なくとも君が生きていることを知る者がひとりはいるわけだ
- 木暮
放り出したら危ないんじゃないのか
- 神
お姫様、掃除や洗濯や料理できる?
えっ、ええまあ、普通程度には……
- 花形
いいんじゃないか。オレたちも助かる
ここにいてもいいの?
- 牧
オレたちが山に行っている間、それらのことをちゃんとできるか?
はい、がんばります
- 牧
よし、じゃあ君をこの家の一員として迎えよう。名前は?
白雪です
- 藤真
長いな、でいいや。オレは藤真、よろしくね
- 花形
正確に言えよ。こいつはスニージー・くしゃみ・藤真
- 藤真
全部言う必要ねえだろ! グランピー・おこりんぼ・花形のくせに
- 清田
オレ、ハッピー・ごきげん・清田!
- 神
オレはスリーピー・ねぼすけ・神。でもずっと起きてるよ
- 牧
オレがドック・先生・牧で、こっちがバッシュフル・てれすけ・三井とドーピー・おとぼけ・木暮だ。いっぺんに覚えようとしなくていいからな
- 藤真
ほんとだよ……オレにくしゃみの要素ひとつもないぞ
- 神
オレもねぼすけの要素ないよ
- 木暮
しょうがないよ、単なる7人縛りなんだし
-
……
- 清田
、ご飯まだ?
もうすぐできるから待っててね
- 藤真
いやーこれは思ったよりいいな
- 木暮
助かるよな、帰ってきてすぐ飯にありつける
- 花形
たぶんくしゃみが言いたいのはそういうことじゃないぞ
- 藤真
そっちの名前で呼ぶな!
- 三井
オレたちは助かるけど、大丈夫なのか、城の方は
- 神
昨日近くまで行ってみたけど、特に変化ないっぽかったよ
- 三井
城の内情なんか知りようがないしなあ
- 牧
、オレたちが留守の間、何もないか?
特にありませんよ。誰も来ないし、洗濯くらいでしか外に出ないので
- 牧
それならいいんだが……
-
……
- 牧
ただいまー。あっ!
- 花形
、どうした!
- 清田
えっ、どうしたん!?
- 神
が倒れてる
- 木暮
おい、息してないぞ
- 三井
、しっかりしろ!
- 藤真
ちょっと待て、なんだこの飾り紐、胸の下に食い込んでるぞ
- 牧
なんだこれ、結び目固っ!
- 三井
ナイフで切れよ、ほら
……っはあ!!
- 清田
ー!!!
- 木暮
大丈夫か、何があったんだ
- 藤真
こんな飾り紐、今までお前してなかっただろ
今日、物売りのおばあさんが来て、これを下さったんです
- 三井
それがなんでこんなに食い込んでるんだよ
街で流行ってるんですって。きつく結ぶとおっぱい大きく見えるっていうのでお願いしたんです。きつくしすぎて倒れちゃったみたいですね、エヘヘ
- 藤真
バカかお前はー!!!
ほんとに藤真はくしゃみよりおこりんぼだね……
- 木暮
笑いごとじゃないだろ。もう少しで本当に死ぬところだったんだぞ
- 花形
不用意に人から物をもらったり買ったりしたらダメだ
はーい……
- 神
……城の手先かな
- 牧
それにしては手口が甘いんじゃないか
- 神
だけど、こんなきらきらした飾り紐、山奥まで売りに来ないよ
- 三井
ここには女の子が楽しくなるようなものがないからな
- 牧
同じ手口に引っかからないといいんだが
-
……
- 牧
ただいまー
- 清田
がいない
- 藤真
まさか、またかよ
- 木暮
おい、大変だ、井戸のところでが倒れてる!
- 牧
くそっ、やっぱり城の手先だったか!
- 三井
、! しっかりしろ!
- 神
どうしよう、息してない。脈もない
- 清田
なんだこのリンゴ……うわっ、これ毒がついてる!
- 藤真
今度は食い物で来たのか……
- 木暮
冷たくなってる……
- 清田
嘘だろ、死んじゃったのかよ
- 花形
そんな……
- 神
なんでこんなことに……
-
……
- 清田
なあ、本当に死んでるのか、これ
- 木暮
まるで眠ってるみたいだよな。うちに迷い込んできた時みたいだ
- 藤真
これキツいな……こんなにキツいもんだったのか
- 三井
棺、ガラスで作ってよかったな
- 花形
キツいんだけど埋められないよな
- 神
ただの居候だったのに、いつの間にか大事な女の子になってたな
- 牧
いい子だったからなあ。本当にいい子だった
- ???
あのー、何をなさっておいでですか
- 牧
旅の方ですか。お弔いをしています。愚かで哀れな我々の姫君です
- ???
それは失礼を……では私も姫君のために祈りましょう
- 三井
……誰だ?
- 神
……見たことある気がするんだけど
- ???
こ、これは美しい……! 本当に死んでるのか
- 清田
毒リンゴ食べちゃったからな
- ???
なんと酷いことを。ああそれにしてもかわいいまるで寝てるみたいだ
- 藤真
ちょ、おい、何するんだ
- ???
こんな美しい姫には二度と出会えないでしょう。お別れのキスを――
- 木暮
あっ、口からリンゴの欠片が――
……あら?
- 清田
ー!!!
- 花形
嘘だろ、
私、どうしたのかしら、なんでこんなところで寝てるの?
- ???
姫、悪い夢を見ていただけですよ
まあ……あなたが起こしてくださったのですか
- ???
あなたの美しさに惹かれてこんな山奥まで迷い込んでしまいました
- 三井
何言ってんだコイツ
お名前を――
- ???
プリンス仙道といいます。西の谷の向こうの城の王子です
まあ、王子様!
- 神
あっ、そうだ、陵南城の王子だ!
- 花形
あー、終わったな
- 木暮
なんで?
- 牧
まあ見てな
- プリンス
姫君、私とともに城にいらっしゃいませんか
まあそんな……よろしいのですか
- プリンス
もちろんですとも。さあ姫、参りましょう
はい! 皆さん、さようなら! いつかお城に遊びにいらしてね!
- プリンス
いざ参らん、はッ!
- 牧
――というわけだよ
- 藤真
ほんとにバカな娘で……
- 花形
もう少しきちんと教育してやればよかったな
- 木暮
陵南城は確か今、王子の母親が女王じゃなかったか
- 三井
またヘマやらかすんじゃねえだろうな
- 神
やるだろうけど、あの子、運がいいからなあ
- 清田
それよりまた掃除洗濯自分たちでやるのか
- 藤真
あーめんどくせー
- 牧
めんどくせーけど、もう不用意に女の子なんか家に入れないからな
- 花形
わかってるよ。女の子はもうこりごりだ
- 三井
だいたい、その女の子のせいでオレたちはこんな山奥でコソコソする羽目になったんだからな。初心忘れるべからずだ
- 木暮
さあ、じゃあ狩りと見張りに戻ろう
- 牧
やっぱりここにも見張りを残そう。万が一ってこともあるからな
- 神
清田、留守番頼むぞ
- 清田
へーい
- 藤真
じゃ行ってくるぞ
- 清田
へいへい、いってらっしゃい。――――一番年下だからってまたオレが留守番かよ。いいよな兄貴達は。はー、それにしても、女の子か……オレたちの妹、大きくなっただろうなあ、元気かな――
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※元ネタ:白雪姫、十二人兄弟、白鳥の王子