君と犬と僕が日曜の空の下

sequel.

「あっきたきた! どうだったよあの後!」
「いやー犬をダシに彼女作るとかスタメンはやることがエグいな」
「大人しそうだけど可愛い子じゃん」

と別れ秀吉を家に戻して10時半、海南大附属高校体育館の信長である。

「マジなんなんお前ら、小学生じゃあるまいし」
「そりゃあ信長だからだな」
「他のやつのを見ても笑えないけどお前はクソワロ。植え込み地獄」
「いや意味わかんねえって!」

体育館の窓を全て開けながら、とりあえず同学年の部員に文句を言う。

「あくまでも例えばだけど、牧さんなら見たいけど神さんは無理っていうか」
「いやそれもどうなん……

と言いつつ、確かに牧なら見てみたいと思う。首を傾げながらも信長は口元がにやりと曲がるのを抑えられなかった。そしてもちろん神のデートを覗くなどという恐ろしい行為は出来かねる。

「で? チューは? したの?」
「はあ!?」
「えっ、しなかったんか!? なんだなお前はもうちょっとこうオレたちのためにだな」
「なんでお前らのためにチューしなきゃならねえんだよ!」

オレたちのためにではなくて、オレたちの娯楽のためというのが正しい。

「信長くん、私、このままじゃ黒い部長に奪われちゃう!」
「バーカ、このスタメンのオレ様がそんなことさせねーぜ」
「やだっ、信長くんステキ!」
「アホかお前らァ!」

顔を赤くしてキスの件を答えたがらない信長の目の前で、同学年の部員がエチュードを始める。

「えっ、黒い部長ダメか。じゃあ白い神様にするか」
「白い神様優しくって私ほだされそう!」
「バーカオレのことだけ見てろってんだよ」
「いい加減にしろォォ!」

信長はもう首まで真っ赤。イジって楽しいキャラだ。

「あれ信長、ちゃんと来たの」
「神さんはオレのことなんだと思ってんすか」
「今朝可愛い彼女ゲットしたうらやまけしからん奴」

真顔で言う神に信長はがっくりと肩を落とす。さらに午後、3年生がやって来てもこのネタは引っ張られた。

「ほお、清田がなあ」
「へえ、どうもすんませんした」

相手が牧でも、もうまともに相手をする気力がない。

「海ってひょっとしてあれか?」
「あー、そうっす。牧さんよく波乗ってるあたりだと思います」
「小型犬を連れた……
「え、牧さん知ってるんすか」

信長はガンとして詳細を語らないが、意外なところから情報が出てきた。

「よくサーファーにナンパされてるよ」
「はあああ!?」

信長の背後で神がたまらず吹き出す。

「あーあ、大変だこれ」
「海南の生徒だって知ってたら助けたんだが……まあ清田、頑張れ」

真っ赤になって歯を食いしばる信長をひとり残し、部員たちはニヤニヤしながら散っていった。

……あれ? ホントか今の」

翌朝から毎日護衛、決定です。

END