なかなか治らないねえ
えっ? 何が
その寂しそうな顔
そ、そんな顔してるか?
してるしてる。こう……ちょっと眉が下がって
……もそのニヤニヤ顔治らないな
そりゃそうでしょ〜。こんな時間に私の部屋に公延がいるなんて!
……ごめん
いや別に私文句言ってないでしょ
でも、寂しい思いさせてたよな
寂しくなかったと言えば嘘になるけど……でも今年はちょっと楽しかったよ
えっ、そう? どんどん時間なくなってったのに
それはそうなんだけど、予選が順調だった頃なんかさ、最近バスケ部すごくない? てか木暮ちょっとかっこよくなったよね? とかいう女子たちのひそひそ声を聞きながら君に大ちゅきスタンプを送るあの気持ちよさと言ったら
そんなことになってたのか
あっ、ちょっと後悔してるー
し、してないよ! どうにも切り替えきれないんだよな
でもたまに顔出したりして、赤木よりはうまくやってるなって思ってたけど
だけどそれも三井がいる間までだよ。少しずつ頻度も落としていかないと
むしろその三井が引退する必要なくなってしまったのでは
それも困ってる。顔出しやすいままだからな……
こんなに早く三井が推薦取れるとはね〜
宮城が複雑な顔してたな。この人引退しないんじゃないかって
あはは、だよねえ〜
……中学ん時はこんな気持ちにならなかったのにな
そりゃその時は何も成し遂げた実感もないままだったし、赤木も一緒だったからでしょ
まあまた一緒かもしれないけどな
でも三井とは離れちゃうもんねえ
あいつだけじゃないよ、うちは部員が少ないから余計に見える顔の距離が近いだろ、みんな
……うん、そうだよね。なんだっけ、予選の時の。そうだ翔陽だ。あそこみたい大量の部員がいたらこんなに寂しい思い、しなくて済んだのかもしれないね。変なの、湘北なんて、むしろ仲良し感ゼロなのに
だからかもしれないぞ
どういう意味?
その仲良し感って、ゼロどころかむしろマイナスだったと思うけど、でも、オレたちはたぶん誰より仲間たちの強さってのを信じてた気がする。それもまあ、あいつらなんかは「ちゃんとやらなかったらブン殴る」っていう感じだったけど
公延の中をたっくさん、独占してたもんねえ、バスケ部。そこはちょっと嫉妬してた
ご、ごめん
ううん、そういう意味じゃないよ。だって知り合った時にはもう公延はバスケに夢中だったし、それを忘れて私に夢中になってほしいとも思ってなかったし、だけどその公延にとってのバスケみたいな、魔法みたいに強い魅力が私にあればなあ! ってね
……あるけど
あはは、気を遣わなくていいって
いや、遣ってないよ
え、ちょ
学生でバスケやってられる時間は限られてるし、いつか終わるけど、は違うだろ
それはそうだけど……
こんな風に寂しくなるだろうけど、学生でバスケやってられる時間が終わるのは納得できてるし、それでいいけど、はまだまだ終わらせたくない
ほ、ほんとに……?
それに、引退してオレの中を独占してたものがなくなって、空いた穴を埋められるのってだけだけど
ど、どうやって埋めますか
じゃあまずチューしよっか
んっ……これで埋まるの?
うーん、0.1パーセントくらい?
少な! 大した効き目ないじゃん私のチュー
だからいっぱいしないと
そう来たか
寂しくて寂しくてしょうがないので埋めてください
それは嘘くさい
えー
公延、私たち受験生なのよ!
お菓子にDVDにゲームに、遊ぶ気満々じゃん
しょ、しょうがないでしょこんな時間に公延が私の部屋
寂しかった?
…………うええ寂しかったあああ
よしよし、寂しい者同士だな
勉強もするけどちょっとまったりしたい〜
まったりチューな
んふ、メガネ外したる
よく見えないのでもっと近寄らないと
きゃー!
END