BARAMB GARDEN SECRET FILE : CODE 029 / セルフィの回想2
なぜそこまでが気になるのか、正直今でも判らない。
でもそれは誰かを好きになるのとも、ちょっと違う。まるで自分の家族が隠し事をしているような……家族なんていないから判らないけど、そんな感じがするの。
仲良くなってからは、特に。自分の事棚に上げてるけど、全部話してくれているようでどこか演技のような、そんな感じで。
きっと本音で話してくれた事もあったと思うの。だけど、本音とそうじゃないものの区別がつかないの。少なくともアタシには判らなかった。
そんなところも……たぶん惹かれたんだと思う。
とても魅力的な子だった事は今でも疑ってない。どこにでもいるような子に見えるかと思えば、まるで見た事もないような特別な子に見えたりもする。
悪く言うつもりなんてないけど、そう、例えばスコールなんてああ見えて気分屋だし、気難しいし、本人どう思ってるか知らないけど、無愛想な割には機嫌が悪いのだけはしっかり顔に出るでしょ?そういう意味では普通にスコールも読み取りやすい部分があると思うの。
でも、にはそういうの、なくて。
笑ってるから楽しんでいるのかと思うけど、本当はそうじゃないような顔を見せるときがあって、それがどうしても気になって……。
ああ、それでね、とにかくアタシはそんな環境に置かれてるを見て見ぬ振りをしていたし、もアタシにそんな事を言う事もなかった。
だけど、それをがまったく気にしていなかったっていうのは違うと思う。
どう思ったかは本人の口からは聞いてない。けど、宝捜しを始めるちょっと前からニーダとよくケンカするようになった。アタシが目にする事が多くなったと思うくらいだから、本当はもっとたくさんケンカしてたのかもしれない。だけど、あんなに仲良かったのに、はすごくニーダに突っかかるようになった。
でも、ニーダもああいう人だから、反論したりせずになだめたりしながらまだなんとか付き合ってるって感じだったと思う。
さっきも言ったけど、の言葉全てどこまで本音でどこからがそうじゃないのかアタシには判らない。だけどね、はいつでも自分で考えて自分で行動したがってた。
先頭に立つとか、仕切るとかじゃなくて、邪魔されるのをすごく嫌ってた。
だから、単独任務にありついた時なんかはすごく張り切ってた。逆に、集団でゾロゾロ出かけていくような時はいつまで経ってもぐずぐず言ってた。
今ここにいるのがアービンとキスティだから、アタシは話す事にしたけど、本当はこんな事アタシがベラベラ人に話していいものだとは思ってない。もちろん思ってない。
だけど、言うね。
本当かどうかわからないけど、言うね。
は、存在理由を見失ってたと思う。
それもこれも、もちろんアタシが引きずり込んだから。スコールやサイファーに憧れる女子に変な目で見られて、キスティのファンの子にも色々言われてた。はそれでへこんじゃうような子じゃないけど、逆に焦ってたんだと思う。
基礎行動でつまづいた事を、誰よりも恥じているのは本人だったと思う。だから、SEEDとして頑張りたかった。だけど、それでも誰も認めてくれなかった。
……いつでもはアタシ達のおまけだった。
そんなの、じゃなくたって、耐えられないよ。アタシだってそんなのはイヤだ。そんな風に見られてたら、SEEDなんてどうでもよくなっちゃって普通だと思う。
だけどはSEEDにこだわった。卒業するよりこだわった。
ああ、でね、最初に「FHで面白い話聞いた」って言い出したのは当然ニーダだった。誰に聞いたのかは知らない。だけど、ニーダは真っ先にその事をに話したの。アタシはからそれを聞いた。けど、それが元でまた2人はケンカになっちゃった。
たぶんニーダはと2人だけで宝捜ししたかったんだよ。見つからなくてもそんな事はどうでもよくて、ただと2人で宝捜ししたかったんだと思う。それをはアタシも含め、何人にも吹聴しちゃった。
それでもやっぱり結局ニーダが折れて、宝捜しは始まったんだけど、は「セントラの指先」は絶対存在するって、すごく目を輝かせてた。見た事もないくらい楽しそうで、充実してて、毎日没頭してた。
ニーダはどうだったのかな。でもそれに何も言わず付き合ってたんだと思う。だけど、しばらくする内にニーダが「セントラの指先」に関する資料をに見せてくれなくなったってアタシは聞いてる。
そんな事があってからすぐ、はスコールとサイファーを巻き込んだの。あの2人がなんで手を貸したのか知らないけど、とにかくはニーダへのあてつけみたいにして2人を誘ったの。
でも、見つからない。
はあるって言い張ってたけど、見つからなかった。
なのにガーデンバッシングは始まるわ、サイファーは卒業しちゃうわ……。宝捜しメンバーはとうとうバラバラになっちゃった。しかも相変わらずニーダは資料を見せてくれなかったりして、は毎日イライラしてた。
ちょうどその頃、アタシ達卒業試験、受けたでしょ。みんなで。それまでそんな話した事もなかったも受けたんだよね。今にして思えば、に取ってもいいタイミングだったのかもしれない。
そんな頃に、アタシがトラビア就職決めて帰って来た時だったかな?はティンバーで面接して、その返事を待ってる時だった。
宝捜し残念だったね、ってアタシが言ったら、「もういい」って言ってたの。これでティンバーが決まれば、もうそんな事はどうでもいいって言うの。
アタシもちょっとだけ安心して……決まるといいねって話してた。
何度も言うけど……本当はどう思ってたのか知らない。
だけど、ティンバーから内定もらって、ティンバーに行ったんだからその時は本当にどうでもよかったのかもしれない。だけど……きっと……アタシが思うに。
どこかで何かの弾みで、思い出したんだよ。
「セントラの指先」を。
そこからはアタシも本当に何も知らない。
だけどね、アタシの推測だけどね、「セントラの指先」が何なのかアタシも知らないけどね、はまだ……終わってないんだと思う。
何って……はまだSEEDなんだよ。
アタシはトラビア海軍の軍人、キスティはバラムの国家公務員。アービンは大使館職員。はっきり言ってアタシ達はもうSEEDじゃないよね?
だけどのSEEDは終わってないんだよ。
ティンバーでどんな職についたのか、アタシは知らない。だけど、たぶん今でもはSEEDなんだと思う。その……意地とか、誇りとか、たぶんそんなようなものが……「セントラの指先」に向いてるんだと……。
ニーダは遠ざけようとしたんだろうね。それはそれは熱心に「セントラの指先」に執着するから、正体不明のお宝を隠しちゃったんだろうね。ニーダはいつでもを大事にしていたから……関わってほしくなかったんじゃないかな。
でも、はそんな事されて喜ぶような人じゃないから……。
たぶん、をそういう人にしてしまったのは、アタシだから。
連絡が取れなくなって初めて自分のした事に後悔したけど、もう遅かった。何も言ってあげられない、何も聞いてあげられない。だけど、きっと今もアタシが引きずり込んだ世界の重みに耐えてるんだと思うと……アタシ自分が情けなくて……。
だから、は悪くない。きっと強情なニーダから「セントラの指先」を奪っただけだよ。手に入れたはいいけど持て余してどこかで困ってるかもしれない。
この間、サイファーがを探してるってトラビアまで来た。サイファーもまた首を突っ込んでるんだと思う。という事はおそらくはんちょもね。
だから、今日こうやって2人と話せてよかった。やっぱりアタシは誰がなんと言おうとこの件に関して少しは責任があるよ。少なくともの力になってあげなきゃいけないって思うよ。
ねぇ、キスティ、アービン。
アタシは罪を償えるかな。