BARAMB GARDEN SECRET FILE : CODE 029 / セルフィの回想
アタシが間違ってなければ、アタシが初めてを見たのは、あの時。
ガルバディア軍を連れたサイファーとバラムガーデンが全面対決した、あの時。
当時まだSEED候補生だったに、アタシ助けられたの。スコールがバタバタしている間にあちこち走り回ってたでしょう?アタシ達。あの時にね、救護室の前を通った時に後ろを取られてたのに気付かなかったの。それを中から飛び出してきて助けてくれたのがだった。
急いでたし、あんな状況だったし、アタシは一言だけお礼言って、名前も聞かずにまた走って行っちゃったんだけど、大して大柄でもないが長い剣を振り回してたのがすごく印象に残ってた。
サイファーとかアービンみたいな大男が持てばちっちゃく見えるかもしれないけど、が掴んでると、まるでその重さで倒れちゃうんじゃないかって思えるような武器だった。それをくるくる振り回して、それよりも機敏に動いてるがまだ候補生の制服で、不思議に思ったのを覚えてる。
でもそれはすぐに判った。
やっとガーデンが元に戻ってから、教室に入ってくを見かけた時、悪いかな、と思ったけどそこで何の授業をやってるのか、アタシ、調べちゃったの。
ほとんどの男子が前衛に立って、女子は魔法で後方支援してる中で剣を振り回して男子にも負けないような腕前のなのに、まだSEEDじゃなくって、教室に入っていくのはなんでだろうと思って。
あの時あの子が受けてた授業は、「基礎行動」だったの。
そう、そう、もちろんあれは年少クラスから受ける授業だし、SEED検定受けてもいい頃になればだいたい履修し終わってる。だけど、はそこに入って行ったの。
アタシもそう思ったよ、おかしいって。基礎行動なんてたぶんアタシ達は先生になれるくらい馴染んだ内容のものだし、キスティなんて教科書なくても教えられると思う。
それで、その後廊下で基礎行動の先生とすれ違ったから、聞いてみたの。1人、もうSEEDになれるような子が授業受けてませんか、って。
そしたら、先生、こう言ったの。
「あの子は基礎行動を理解したくないし、する気がない」って。
それがどうしても気になっちゃって。基礎行動なんてそんなに難しいものじゃないでしょ。けど、それがなんでそうな風な言われ方になるのかも判らなかったし、とにかく気になってた。
だから、少し経ってからを見つけた時はもう思わず声かけてた。
……たぶん、その時にはもう、ニーダとは付き合ってたんだと思う。詳しい時期までは知らないけど。あ、ごめん、知らないか。ホラ、アタシがガルバディアのミサイル基地に行ってさ、なんだっけ、ガーデンはマスターがどうとかでモメてたんでしょ?
その時に知り合ったらしいんだけど。アタシが声をかけた時、ニーダもいたの。正直、気付かなかったんだけど。でも都合はよかった。ねえねえ!って声かけてから、なんて言おうか迷ったんだけど、ニーダがいるのに気付いてそれをダシにしちゃった。
もしかして、あの時助けてくれた人じゃない?名前なんて言うの?
……今にして思えば相当白々しかったような気もする。でも、アタシはが気になってしょうがなかった。トラビアだろうがバラムだろうが、実技は並以上なのに基礎行動でダメ出しくらうような人、見た事なかったもん。だってそうでしょ?基礎行動なんてサイファーだって終わってるんだよ?
極端な話、「SEEDは何故と問うなかれ」を理解出来ないって言われてるようなものでしょ?敬礼が出来ないっていうようなものでしょ?
それがどうだって言うんじゃなくて、アタシはそんな人が一体どんな人なのか、どうしても自分で確かめたかったのかもしれない。はどんな考えを持って、どんな思いでここにいて、どうしたいのか。
だから、アタシは見かけるたびに声をかけた。お昼一緒に食べよう、とか、みんなで遊ぼうよ、とか。でもそうするとどんどん親しくなっちゃって、友達になっちゃって、基礎行動がどうの、なんてすぐにどうでもよくなっちゃった。
あの魔女事件からこっち、アタシ達って目立つようになっちゃったのに、アタシはその中に突然を引きずり込んだの。ちょっと興味があるからって、連れ込んだの。
もちろんアタシ達といるのがイヤならが拒否したと思うよ。自身はそうはしなかったけど、周りはそうはいかなかった。
その時にはニーダもいたし、アタシとだって一緒に遊んだりする程度で、何もスコールやサイファーへの足がかりとしてアタシ達に接触したわけじゃなかった。
だけど、そうは思ってもらえなかった。
は、スコールかサイファーかゼルかアービンか。誰かと親しくなるためにアタシと一緒にいるって思われてた。それか、キスティとアタシの横にいて、仲間に入ろうとしてるって、そう思われてた。SEEDでもないのに、アタシ達魔女討伐の枠の中に入ろうとしてるって。
ねえ、そう、アタシ達そんな事、考えた事もないでしょ。思った事もないでしょ。アルティミシア倒したからアタシ達は偉かったかな?そうじゃないよね?
アタシ達がアルティミシアを倒せたのは色んな人たちの、たくさんの大人たちの助けがあったからでしょ。ガーデンの仲間達が助けてくれたからでしょ。
でなきゃ、とっくにアタシ達はガーデンなんか出て行ってたよね?
どこかで世界を救った英雄様だってちやほやされて、たかが10代の子供に大人が頭下げるようなところに行ってたはずだよね?アタシ達が本当に偉くって誰も出来ないようなすごい事したんだったら。
でもあれは……そう、そうなるようになってたようなもので……どこかで少しでもズレてたらアタシ達じゃなかった事かもしれないんだよ!
いくらママ先生が未来を見たからって、いくらその先にあるものを予見していたからって、全てその通りに行くかといわれたらそうじゃないでしょ。あの時この時にアタシ達がどうしてきたか、それが結果としてああなっただけでしょ?
ねぇ、アタシ達はと一緒にいちゃいけないような人だったかな。
はスコールやサイファーと付き合うためにアタシ達と仲良くなったかな?違うよね?ニーダと付き合ってたのも、アタシ達と遊んでたのも、全部スコールかサイファーか誰かのためだったなんて、そんな事、アタシは絶対信じてなかったよ。
だって、別にはスコールやサイファーに会わせてくれなんて言った事もないし、ニーダが好きだったのも絶対ホントだし、アタシ達と仲が良くなっては何か得をしたかな?何か他の人よりも特別な扱いをされる事があったかな?
そんなの全部勝手にアタシ達を英雄に仕立て上げた人だけが思ってた事だよ。
だから、が基礎行動の先生と何度も補修やってテストして頑張って、やっとの思いでSEEDになった時も……わかるよね?
それでも、そういう状況になってるって判ってても、と仲良くしてたのは悪い事だったかな?名前も知らないような人達が、がアタシ達と仲良くしてるって言う事をよく思ってなかったからって、それを断ち切ろうとしなかったのは悪い事かな?
そうじゃないよね?
そんなの、アタシ達……も含めて、だけど、関係ない事だよね?
だけど、それを知ってて何もしなかった事をアタシは悪い事だと思ってる……!
出来るとか出来ないじゃなくて、しようともしなかった事を後悔してるし、なんでしなかったんだろうって今も思う。きっとそこにはどうでもよくなっていたはずのに対する興味がまだ残ってて、それを知りたくて……。
アタシは、自分の興味の為にを見殺しにした。
仲のいい女友達の顔をして、のどんな話も聞きながら、どこかでそれをなるほどね、って共感なんかしないで聞いてた。アタシの耳にも入ってくるをひがむ声なんて、にはもっとよく聞こえてくるはずだった。だけど、そんなもの聞いた事もないようなフリをしてた。
ちょっと真面目な話をするからね、って。みんなアホだよねあんな事言って、って。あんなの関係ないよねっ、て。
そんな事すら思っても言葉にしなかった。
ただという人をもっと知るためだけに。