私の彼氏はスパダリだ。
それは「うちの彼ピッピまじ最高オブ最高だし」とかいうことではなくて、本当にスパダリなのである。スパダリの定義が人により異なることはさておき、ひょんなことから付き合うことになった同じ高校の男の子がまさかのスパダリでちょっとばかり戸惑ってる。
というか、「うちの彼ピッピ」こと牧紳一くんは、スパダリとかいう以前に経歴がまず凄まじい。私が実際に見てない中学以前はちょっと措くとしても、同じ高校に入学した時点で彼はスターだった。バスケット部の超大型新人で、先輩たちがわざわざ教室に彼を見に来るほど。
そもそも、我が海南大附属高校は全国屈指のバスケット強豪校。そんなバスケット部の監督が中1の頃から口説きまくって手に入れた逸材であり、1年生の時からその期待通りの活躍を見せ、神奈川における「絶対王者」を守り続けている。
そして3年生、私のスパダリくんは「帝王」というあだ名になっていた。
それはそれでちょっと言葉の響きが若々しくないなと彼女である私は思うのですが、それでもとにかく神奈川ナンバーワンの選手であることは疑いようもなく、彼がスパダリかどうか以前に、既に校内ヒエラルキーの頂点に君臨していると言っても過言ではないと思うのね。
これだけでもだいぶスペック高いと思うでしょ。
これに中身が伴ってるって、おかしくない?
まあその、私のごく親しい友人は「見た目はそうでもない。黒すぎ」とか言うんだけど、そこは好みの問題でしょ。確かにまつげが長くて色白で顎が尖ってるような男の子ではないけど、背が高くて筋骨隆々としててちょっとワイルド系で、私はすごくかっこいいと思う。
だからそのマッチョがやだっつってんだろ、と友人は言うが、だからそれは好みだっつってんだろ。私は骨と皮しかないメンズが「肉体美」とか抜かしてる方がイラッとくるタイプなので、紳一の鍛えられた体はとてもきれいだと思う。脂肪がないだけでマッチョ名乗るな。
だってさ、みんな筋肉やだキモいとか言うんだけど、その筋肉のおかげでお姫様抱っこ余裕だからね?
そう、お姫様。私お姫様だったのかなってマジで勘違いしそうになるほどなのね、私の紳一くんのスパダリ具合って。それが王子様でなく帝王であるあたりが玉に瑕かもしれないんだけど、まあもうスパダリ言ったら優しいくらいはデフォでしょ。そこは当然レベルじゃない?
その優しいっていうのも、たまに「私に逆らわない彼氏」みたいな意味で言う子もいるけど、そういうことじゃなくて、よく言うでしょ、強い生き物ほど弱者に優しいって。あのタイプ。
そりゃ部活の時は厳格な主将だけど、だけど理不尽なことで後輩たちに威張り散らしたりするわけじゃないし、だから部員たちにも慕われてるし、てかこれは実際にあったことなんだけど、学校から駅に向かう間に小さな子供が道端にしゃがんで泣いてたら何の躊躇もなく声かける人なのね。
まあその、その時は親が近くにいて紳一見てむしろビビってたっていうオチがあるわけなんだけど。
で、部活と学業の両立も抜かりなく、本人に言わせると子供の時からずっとやってきてることだし、スポーツやってる人間はバカで構わないという時代はとっくに終わってて、頭で考えて体を使うということを覚えていかなきゃならない……んだそうで。
なんか堅物でつまんない人に見えてきた? 残念、彼女には甘いの。甘いっていうか、私がイチャイチャしたいオーラを出してるのとかすぐに察してくれて、おいでって言ってくれるとか、私をトロトロに溶かしちゃうのがとても上手い。そういう意味では私は完全に紳一の手のひらの上。
じゃあなんで戸惑ってんだよ、という話に戻るけど、困ってんですよ。
要するに、彼氏のスペックが高すぎるんです。
私の方も校内で知らない人はいない有名人で、例えば他の競技で紳一くらい活躍してるとか、いつもテストで1位だとか、そういうのがあるならともかく、そのへんはとても平均的なので、失礼にも「釣り合ってない」と言われてしまうわけ。
それをちょっと叔母さんに話したことがあったんだけど、彼女は「時代はどんどん先へ進むのに、そういう人って何十年経ってもいなくならないのね」と言いながら吐く真似をしていた。
嫉妬というか僻みというか、ぴったり来る言葉がなかなか見つからないんだけど、どうも私は「紳一の威を借る凡人」ということになっているらしい。別に付き合ってんのは人の好みだから勝手だけど、は別にすごくもなんともなくね? というやつだ。
私は何も「私にそんな口きいていいのかな? 帝王の彼女ぞ? 我、神奈川の帝王の彼女ぞ?」とか言ったこともないし、そういう振る舞いで我儘を通したこともない、っていうか別にわざわざ校内で紳一と付き合ってることをベラベラ口にしたりしてないんだけど、なぜかそうなってる。
で、まあ紳一に比べたらとてもとても凡人である私はそういう鬱陶しいやつらと関わりたくないあまり、つい何でも控えめになってしまったり、意見を言おうとした口を慌てて閉じてしまったりする。で、あとでそれは違うんじゃないか、って自己嫌悪に陥る。
そうすると、そうやって自己嫌悪に呻く私を紳一がまた慰めてくれるわけですよ。
「ああいうの、本当に理解に苦しむよな。てかそういう話を何でオレに言うんだよって思うんだけど、何も考えてないんだよな。オレそういうの見たことないけど、どこで見たんだって返すと誰かに聞いた、知らないけどって言い出す。知らないんだったらそれデマみたいなものじゃないかってツッコミ入れると逆ギレかよって逆ギレするし」
紳一はカリカリしながら私を抱き寄せて頭を撫でてくれてる。ううう、スパダリ尊い。
「ハイスペックはハイスペックと付き合ってなきゃいけない、みたいな人って結構多くて……」
「というかそのハイスペックってのがまずよく分からん」
「それは自覚しなさい」
「努力の結果だ」
これまた紳一に言わせると、やはりスポーツひとつ取っても、同じ結果を得るのに努力が100必要な人と50で足りる人という「素材の違い」はどうしてもある、という。だから紳一はその50で届く人なんじゃないの、と私は思うけど、本人は「50で届くことにも100の努力をするタイプだから結果が出てるだけ」と言って譲らない。かっこいいけど、そうかなあ。
だから彼女のことを自分のオプションのように言われることも、それが素材として不釣り合いだなんてことを言われると腹立たしいと正直に彼は言う。
「オレの知らないところで他の男にモテまくるよりはマシなのかもしれないけど、腹立つよ」
「……言わなきゃよかったね、あんなこと」
「、それは違うだろ。本気で思ってたから言ったんだ。それは否定しないでくれ」
「だって……」
帝王3年目、紳一は先日「インターハイ予選全勝優勝」という結果を残した。まあその、海南てそれが当たり前で十数年らしいんだけど、それでも「神奈川最強」の名はちゃんと守り、MVPまで獲得して帰ってきた。期末直前だったけど紳一は賞賛の嵐を持って迎えられた。
そこに突撃してきたのが新聞部。この新聞部、2年前に突然再始動した部で、それまでは10年以上廃部になってたらしいんだけど、ともかくその部員がインタビューにやってきた。
これまでのことこれからのこと、特にこのあと夏休みに控えているインターハイについてのロングインタビューが中心だったけど、最後の最後で「彼女いましたよね? なんかメッセージとかあります?」なんて聞いてきやがった。ねえそれ本当に必要だった?
紳一も紳一でバカ正直に「たくさん助けてもらって感謝してる。彼女のためにも頑張りたい」とか言っちゃった。それを校内新聞にしっかり書かれてしまった。美談になると思ったのかもしれない。
確かに、予選が期末直前だったからテスト対策なんかは私が本当にサポートしてたし、日々の生活の細かなことで忙しい紳一が出来ないことを代わりにやったりとか、そのくらいの些細な協力はずっとしてた。だけどそれをバラす必要はなかったんじゃないかと思うんだよ。
しかもそういう私のサポートは、あくまでも個人的に、紳一との間だけで行われてたことで、親しい友達だって私が具体的にどう助けてたのかってことは目にしてない。だから紳一が本気で思ってたから言っちゃったことは、社交辞令なんじゃないか疑惑と化してしまった。
ってなんかやってたの? 見たことないけど。ほんとにやってたの? ――という。
「今回の期末はマジで助かったんだよ、いくつか範囲広すぎて心配なとこあったし」
「補習なんか絶対ダメだしね……」
「てか今日だってそうだろ。実際はこうして助けてくれてる」
現在テスト休み中。それこそいくつかの教科から夏休みの宿題を前倒しでもらった紳一が少しでも多く片付けたいと言うので、私の部屋で一緒にやってた。
もちろん紳一はバサッと宿題を取り分けてあとはよろしく! なんていうことはしない。私がやってるのは宿題を片付けるための検索とか、そのまとめとか、ほんとに補助的なことで。テスト休み中だってインターハイを控えてる紳一に休みなんかないから、合間を縫って一生懸命やってるのに。
いやその、今は休憩中で、だから私がまた愚痴って紳一が慰めてくれてるんだけど。
「と付き合う前は全部自分でやってたことなんだけど、いざこうして手を貸してもらうようになったら、それがどれだけ助かってるのかって、まあこういうのは実際にやってもらわないとありがたみがわからないだろうけど、、すごいことなんだよ」
こういうことを真顔で言ってくるあたりがやっぱりスパダリだと思うんですよ……
「だから、しんどいことあったらすぐにオレに言えよ」
そう言いながら私の頬に優しくキスしてくれる紳一は、やがて夏休み、インターハイで準優勝に輝いて帰ってきた。紳一は、日本で2番目に強いチームの主将になってしまった。
その結果、私への風当たりはますます強くなってしまった。
その「事件」が起こったのは、2学期が始まって2週間くらいした頃だったと思う。紳一は月末に国体を控えていて忙しく、でも大学の推薦進学は既に内定しているので心置きなく練習に励んでいた。
その日はたまたま私がひどい生理痛で、しかもいつもより症状がひどくてぐったりしてしまい、午前中のほとんどを保健室で寝てた。なので養護の先生と話してお昼を食べずに帰ろうかという話になってた。それを聞きつけて紳一が家まで送ってくれると言い出した。
もちろん私は遠慮したけど、紳一が普段の生活も進路もまったく問題なしと知る養護の先生は賛成してたし、私の家に誰もいなくて迎えも頼めないということが災いして押し切られてしまった。教室から私の荷物を取ってきた紳一が戻ると、そこへ早退の報を聞きつけて副担任もやってきた。
これがマズかった。この副担任、去年は紳一のクラスの副担任で、バスケ部贔屓。最悪。
「はひとりで帰れないほどひどいのか」
「そ、そういうわけではないと……たぶん……」
「昼の間に送ってまた戻ってくるのか? 牧、ちゃんと昼を食べる時間あるんだろうな」
「大丈夫です。問題ありません」
紳一は怯むことなくそう言ったんだけど、先生はどうにも面白くないらしく、しかめっ面のまま。
「……君らも高校生だから、そうやって付き合うだの何だのやりたい年頃なんだろうけど、だからこそもう子供じゃないんだし、、牧がそんなことしてる暇ないの、お前が1番よく知ってるだろう」
はあ? と思ったけど、私はあんまりだるいので咄嗟に反論できない。
「牧もさあ、自分の立場をよく考えて学校生活をどう過ごすのかっていうことは改めた方がいいんじゃないのか。お前さんは今年の海南になくてはならない1番大事な存在なんだし、彼女のナイト気取ってる場合じゃないだろう」
保健室の前の廊下で先生はそう言い、私にまたひとりで帰れないのかと言い出した。
先生やめてよ、紳一に余計なこと言うのやめて。
「送って戻れるほど近いんだろ、だったらタクシーの方が安全じゃないのか」
やめてって言ってんでしょ、もう何なのこの人、それでも教育者なの、早くあっち行ってよ!
「先生」
ああもうだめだ、火がついちゃったよ……
「具合の悪い彼女を安全に送り届けてまた戻ることが、そんなに悪いことでしょうか」
「具合が悪いったって、病気じゃないんだから」
私は具合悪いのも手伝って、もうこの状況をどうにかしようという気もない。紳一に火をつけちゃったのは先生だし、バスケ部を贔屓してるのも先生だし、私は自分だけ重力が増したんじゃないかっていう苦痛に正気を保つので精一杯なので、あとは知りません。
「病気じゃなくても激しい苦痛に耐えているんです。それは僕たち男には絶対に理解できないことです。それを、ひとりで帰れというのはあまりに可哀想です」
可哀想、なんて言い出したので先生はふんと鼻を鳴らして反論しようとしたけど、紳一はそれを遮って私の肩を優しく抱き寄せた。私に力が伝わらないようにしてるけど、紳一の腕はガッチガチ。ああもうこれかなり怒ってるよ……
「先生はさっき、僕が海南で1番大事な存在だと言いましたけど、間違いです。の方が上です」
先生がはあ?って言ってる。そりゃ言うよね。
「もし僕が海南に欠かすことの出来ない存在なのだとしたら、それを守り支え続けているのはこのです。少なくとも今の僕は彼女なしには存在しません。インターハイで優勝できなくて、悔しさのあまり自暴自棄になりかけていた僕を夏休み中励ましてくれて、またもう1度ピュアな気持ちでバスケットに向き合えるように導いてくれたのは、監督でも仲間でも家族でもなく、彼女です。つまり、僕がそんなに大層な存在なら、を大事にする方が優先事項です。彼女を蔑ろにすることは僕を痛めつけるのと同じことです。先生のお話は破綻してます」
ええと、実際のところ、インターハイから帰ってきた紳一は本人が言うほど荒れてなかったし、自暴自棄というよりは疲れもあって無気力になってただけだった。だけど珍しく落ち込んでるもんだから、それにちょっと母性とやらをくすぐられた私がたくさん甘やかしたりして、それで浮上したのは確か。
なので大袈裟と言えばそうなんだけど、どうよこの言い方。ああ生理痛でさえなかったら。
先生は紳一の反撃に驚いているようでも呆れているようでもあった。もしかしたら、自分の言うことを素直に聞かない紳一から気持ちが離れたのかもしれない。出来るだけ早く戻れと言いながら鬱陶しいものを追い払うようにして解放してくれた。
「ごめん……」
「なんでお前が謝るんだよ! あんな言い方あるか! 生徒を教え導く立場の人間がおかしいだろ!」
「それはそうなんだけど……あんな風に逆らったりして……」
私は事態を余計に悪化させたんじゃないかと思ったんだけど、紳一はまだ怖い顔をしている。そのまま学校を出て私の家に向かう間も怒りがおさまらないみたいで、やっと普段のゆったりした表情に戻ったのは私が着替えてベッドに横になってからだった。
先生にはああ言ったけど、もちろん昼休みの間に戻るのは不可能。紳一は午後をサボるつもりで自分の荷物も持って帰ってきていた。部活に間に合いさえすれば問題はない。
「お腹減ったんじゃない? 早く食べた方が……」
「今ちょっと腹立ってて空腹感ない。いいよ、ちょっと落ち着いたら食うから」
私がヨロヨロと着替えるのから横になるまで全部介助してくれた紳一は静かに深呼吸をしてベッドに肘をついた。紳一にしては珍しく頭に血が上ってしまったので、疲れたのかもしれない。
「ねえ紳一、私は別に……」
「否定しないでくれって言っただろ。オレは本当にがいてくれるから頑張れるんだよ」
「大袈裟だって……」
私は肌がけを目深に引き上げて呻いた。紳一のこういうところは嬉しいけど照れくさい。
「……最初からそうなんだよ。ずっと助けてもらってる」
大袈裟な紳一は私たちが付き合うきっかけになった日のことを語りだした。
あれはもう去年のことで、寒い冬のことで、紳一は冬にある大会で決勝に進めなかった。この試合が終わったら主将にならなければならないという時のことで、紳一はすごく気合が入ってた。だけど負けてしまった。紳一は今日のように、珍しくイライラが募っていたのだそうな。
翌日の放課後、まっすぐに体育館に向かう気にならなかった紳一はボール片手に校内を歩いていて、募る苛立ちのままに誰もいないと思ってボールを地面に叩きつけた。跳ね上がったボールはおかしな方向に飛んで、そして私の頭に落ちた。
「の首が変な方向に曲がったように見えて血の気が引いてさ」
「バスケットボールって意外と重いよね」
「……謝り倒すしかないと思ったのに、ちっとも怒ってなくて」
ボールを拾い上げた私は、後ろから慌てて駆け寄ってきた人物が牧であることはすぐにわかったし、それが昨日大きな大会で負けてしまったということも知ってたし、紳一がわざと投げてぶつけてくるわけがないことも分かってたから、怒る気にはならなかった。
「それどころか、謝ろうとしたオレを気遣ってくれて、無理しないで、って」
世代交代を目前に控えた紳一に向かって「頑張れ」と言う人はいくらでもいたけど、それを遠目に見ながら私は逆のことを考えていた。そんなに頑張れ頑張れって、牧はもう既に充分頑張ってるのになあ。それがつい口をついて出てしまったんだよね。
「一瞬、意味がわからなかったんだけど、そこで初めて昨日の試合はいつもの自分じゃなかった、きちんと気持ちを整えられていなくて、気合が空回りしてたって気付いて、この人すごいなって」
紳一の温かい手が額に触れる。
そう、私たちが付き合い始めたのは、この件をきっかけに紳一が私のことを好きになったからだ。
それほど熱心にアピールされたわけではなかったけど、ほら、何しろちょっと隙のないハイスペくんでしょ。私マッチョも嫌いじゃないし。好きな人とかいなかったら、オレはダメかなって自信なさげに言うその姿に即落ち。
だけど誰がそんなこと信じてくれただろう。校内ヒエラルキーの頂点にいる人に告られて付き合い始めましたなんて、私が同じようにハイスペックでもないのに。
ご覧のように紳一の方がちょっと大袈裟なまでに私のことを好きだなんて、誰が。
「オレなんかよりの方がよっぽどすごい人なのにな。誰も知らないんだよそんなこと」
そんなことないんだけど、マジで紳一は大袈裟なんだけど、だけど優しくこめかみに触れてくる唇が心地よくて私は頭がぼーっとしてきた。ああもう、なんで今日生理なの。
「……でも、知らなくていいんだよな。本当のはオレだけが知ってればいいことだから」
「そう、試合に負けてグズる紳一も私だけが知ってればいいの。あれは私だけのもの」
生理痛でくたばってるのに悪いかな、って遠慮があったのかもしれない。紳一は私がそんなこと言ったもんだから、また私の胸がキュンキュン軋むような切ない顔をして、そして何も言わずにベッドに横たわった。全身だるいけど添い寝が癒やされる……
紳一がゆっくりと撫でてくれるのが気持ちよくて、私は瞼が重くなってきた。
「誰にもあげない。誰にも……」
紳一は私だけのスパダリ。困ることたくさんあるけど、頑張れるよ。
紳一の優しい「おやすみ」という声ですら、こんなに私を溶かしてしまうから。
END